ひたすらネガティブな独り言をつぶやく「ハムレット」 主人公がほぼ“ツイ廃”なのに名作になった理由
主人公は、オセローという偉大なるムーア人の将軍。誰からも尊敬される英雄です。そんな彼が、お金持ちの娘で美しいデズデモーナと結婚します。みんなは、オセローと一緒になれたデズデモーナいいな、デズデモーナと結婚できたオセローいいなぁと素敵な夫婦に羨望の眼差しを向けます。 そこに、イアゴーという男が登場します。彼はオセローに憧れているけど、そこまでの実力がありません。「俺はなんでオセローみたいになれないんだ」と、オセローに嫉妬するわけです。
そして、幸せの絶頂にあるオセローに噓を吹き込みます。オセローの妻・デズデモーナが、浮気をしているという、根も葉もない噓です。しかし純粋なオセローはイアゴーの巧みな話術と策略にすっかりはまり、その噓を信じて、嫉妬に駆られます。私がこんなに愛しているのに、なぜデズデモーナは他の男と浮気したんだ! と。 ここで混乱を生み出した張本人イアゴーは、怒り狂うオセローにこうささやきます。 用心なさい、将軍、嫉妬というやつに。
こいつは緑色の目をした化け物だ (『オセロー』第三幕第三場) ここで言う「将軍」とはオセローのことです。どんなに偉大な人間であっても、嫉妬で我を失ってしまえば、緑色の目をした化け物になるのだと。 化け物と化したオセローは、なんと最終的に妻のデズデモーナを殺してしまいます。実際に浮気をした事実はなく、イアゴーの真っ赤な噓だったにもかかわらず、それを信じて嫉妬に駆られてしまった結果の悲劇でした。 これがシェイクスピアの四大悲劇の1つ『オセロー』のあらすじですが、実は、この作品にも原作はあり、ジラルディ・チンツィオの『百物語』の中にある話がもとになったと言われています。しかし、実は、原作には「嫉妬」ということばはたった一度しか出てきません。
登場人物やあらすじはだいたい同じで不幸な話なんですが、ここに、シェイクスピアは「嫉妬」というテーマを加えたのです。実際、『オセロー』の中には「嫉妬」というワードがめちゃくちゃいっぱい出てきます。 原作をもとにしながらも、人間の普遍的な感情を作品のテーマとしたことで、世界中の人が読み、上演され続ける名作になりました。ここでの一滴のシェイクスピア・エッセンスは、「嫉妬」。素晴らしいアイディアですよね。