112年の歴史を塗り替えた近代五種・佐藤大宗。競技人口50人の逆境から挑んだ初五輪「どの種目より達成感ある」
支えになった父の言葉
――今大会は佐藤選手の雄たけびシーンがよく映し出されていました。あえて、意図的にしていた部分もあるのでしょうか? 佐藤:そうです。フェンシングは自分も合わせて最大36名が出場できるので、1分間の1本の勝負を総当たりで35試合しなきゃいけないんですよ。1本ごとに勝つことによって自分で雄たけびをしながら自分を鼓舞して、「この勢いは誰も止められないんだぞ」と示していました。最初は自分を盛り上げて気合いを入れるためにやっていたんですが、声を出すことによって周りも意識するようになるので、心理戦にも持ち込める効果があります。馬術だけは、馬たちが音に敏感で驚いてしまうので、心の中で声を出していました。 ――今大会では、闘病中のお父様・勇藏さんの言葉にも励まされたそうですね。どんな言葉に勇気づけられたのですか? 佐藤:親父に言われた「死ぬ気でやれ」という言葉に、いつも助けられています。試合だけではなく練習の時もそうですけど、きつい時こそ、その言葉が自分を突き動かしてくれていました。もちろん、親父の言葉だけではなくて、一緒に戦ってくれている監督やコーチ、トレーナーも、みんなが「最後まで全力で頑張れ」と言ってくれて、家族にも支えてもらいました。近代五種は個人競技ですけど、自分が今回戦っていてすごく感じたのは、「これはチーム戦だな」と。支えてくれている人たち全員で戦って、メダルを取れたことをうれしく思います。 ――大会前にはフェンシングの選手たちの合宿にも参加するなど、他競技の選手たちの支えもあったそうですね。 佐藤:それも、近代五種ならではだと思います。特に、フェンシングのエペ団体の日本代表の皆さんのサポートは大きかったですね。パリ五輪に出た方々だけではなく、既にナショナルチームに入っている約20~30名くらいの選手と関わりができたのですが、技術面だけでなく、人間性の面でも学ぶことが多く、本当に感謝しかないです。 <了>