杉咲花×原廣利『朽ちないサクラ』インタビュー 俳優と監督のあるべき姿、今改めて“人を信じること”を考える
今最も次回作が望まれる俳優の一人、と言っていいだろう。 杉咲花、26歳。『市子』『52ヘルツのクジラたち』と傑作を連発し、『アンメット ある脳外科医の日記』では連ドラの枠を超越するような深度で役にのめり込む。その大きな瞳に、繊細な表情に、凛とした佇まいに、役の機微が溢れ出し、観る者の心を惹きつけて離さない。 そんな杉咲花の最新主演映画『朽ちないサクラ』が6月21日に公開された。謎の変死を遂げた親友。その背景にうごめくのは、警察組織の闇。自責の念を抱える主人公・森口泉は、一介の警察広報職員という立場ながら、真実を求めて突き進んでいく。 杉咲はこの作品とどう向き合ったのか。メガホンをとった原廣利と振り返ってもらった。 【フォトギャラリー】『帰ってきた あぶない刑事』でも監督を務める原廣利と、近年最も作品を望まれる俳優の一人・杉咲花(撮り下ろし写真多数)
残り続けるものは自分でちゃんと責任をとりたい
──今回、脚本づくりの段階で、杉咲さんからもフィードバックがあったと聞いています。具体的にどういうお話があったんですか。 杉咲:私が読ませていただいたときには、もうある程度の構成は出来上がっていて。その上で、演じるにあたって役の機微であったり、作品として見つめていく方向性をすり合わせたい気持ちから意見交換の場を用意していただきました。例えば泉の発する言葉において、実際に肉体を通したときに違和感のないものであってほしくて。より口語的なものを選択していきました。 原:杉咲さんは、原作にも脚本にも付箋をびっしり貼られていて。そこまでしっかり読み込まれていることに驚きました。 杉咲:あとは、原作を読んで印象に残っていた場面を共有したりしました。鏡を見ると、そこに(亡くなった親友の)千佳の顔が映っていたり、瞼を閉じたら千佳の姿が浮かんでくるほど、泉の中で千佳という人物が色濃く焼きついていることが感じられる描写が印象的で。そういうことを監督や脚本チームのみなさんと話し合いました。 原:杉咲さんからは脚本を読んだ上での疑問点をたくさん共有していただいたのですが、物語全体の構成であったり、他の登場人物の行動に関する矛盾だったり、ご自身の役以外に関することが多かったんですね。自分のことだけじゃなく、作品全体を見てくださっているところが素敵だなと思いました。 ──『52ヘルツのクジラたち』然り、『アンメット』然り、近年の杉咲さんは演じ手の域にとどまらず、作品づくりに深く関わられているのが印象的です。 杉咲:役割やキャラクターを問わずに、それぞれの疑問や懸念点を作り手たちが認識した状態で作品が作られていく過程に私は価値を感じます。自分の言ったことが採用されなかったとしても問題なくて。それぞれの意見をひとつのアイデアとして共有することで、より方向性が明確になったり、物語が深堀りされていくのなら、やっぱりそういった時間は有意義だと思うんです。私は言語化することがあまり上手くないのですが、考えることや伝えることを横着せずに、自分なりに伝えていきたいなって。 原:すごく大事なことだと思います。僕たちとしても疑問点を全部洗い出してスッキリした上で撮影に臨んでいただくのが一番ですし、実際に杉咲さんからもらった意見をもとに本もブラッシュアップできた。そういう意味でも、とても有意義な時間でした。 ──杉咲さんがそう考えるようになったのは何か理由があるんでしょうか。 杉咲:やっぱりこの先も残り続けていくと想定されるものに対して、生半可な気持ちではいられないなと。自分の名前や顔が共に並ぶ場だからこそ、自分でちゃんと責任をとりたいんです。物語に関わるということは、自分がどういう視点で社会を見つめているのかという表明にもなる。近年、作品の単独主演をやらせてもらう機会が増えてから、よりそう感じるようになってきました。