杉咲花×原廣利『朽ちないサクラ』インタビュー 俳優と監督のあるべき姿、今改めて“人を信じること”を考える
ものづくり現場における信頼の築き方とは
──監督から見て、本番前の杉咲さんはどんな雰囲気ですか。 原:結構オーラを纏ってると思います。 杉咲:纏ってますか(笑)。 原:もちろんいい意味でですよ。ちゃんと演じるから、ちゃんと撮ってくださいという緊張感がある。それって監督と俳優にとってすごく大事なことで。杉咲さんを撮っていると、背筋がピンとする感覚があって心地よかったです。現場で杉咲さんと話すときも結構緊張してましたから(笑)。 杉咲:そうだったんですか!? わかりませんでした(笑)。 原:ふっと見透かされてるような感覚になるんです。そんなオーラを出せる人は限られていて、杉咲さんはその一人でした。部活に例えるなら、僕は「行くぞ~!」とみんなを鼓舞するキャプテンタイプ。杉咲さんは背中を見せて引っ張るエースタイプ。自分とは違うリーダーシップを持った人が現場にいてくれることは、すごく心強かったです。 ──『朽ちないサクラ』は泉が親友を信じられなかったことから悲劇が始まるお話です。この作品を通して、改めて人を信じるということについてお考えになったことはありますか。 杉咲:私は、信じるって、相手のことを自分の見たいように見ることだと思うんですよね。特に泉は、警察の不祥事が自分のせいで外部に漏れてしまったかもしれないという切迫詰まった状況で、誰かのせいにしたかった部分もある気がしていて。そこが泉のずるさでもあると思うのですが。 原:信じるって、言うのは簡単なんですよね。でも完全に他者を信じられるってなかなか難しい。やっぱりどこかしらで疑ったりするだろうし。むしろ人を信じ切るなんて綺麗すぎる気がする。簡単に「信じて」と言ってくる人と出会うと、逆に人のことが信じられなくなる。言葉にすればするほど重みがなくなるというか、簡単に言葉にしちゃいけない言葉かもしれないですね。 ──俳優としては自分の出したものすべてを最後は監督に委ねる形になります。そこにはやはり信じる気持ちがないと難しい気もしますが、ものづくりにおける相手を信じる気持ちをお二人はいつもどうやって築いていくんでしょうか。 原:僕の場合、信じるというより、頼るという感覚のほうが近いかもしれない。それがイコール信じるなのかもしれないけど、僕の中では信じると頼るはちょっと違って。カメラの前に立つ俳優に、いつも最後は「頼む!」という気持ちで託しています。 杉咲:その答えを言語化できたら、こんなに迷わずに済むのになぁと思ってしまいます。人と人って、そんなに簡単に信頼できない。だからこそ、私たちはすがるような気持ちで相手と対話をしようとするんじゃないかなと思います。 ──より良いアウトプットをしていくために、表現者として心がけていることは何でしょう。 杉咲:俳優ととしても、ひとりの生活者としても、生活の時間を大事にすることを心がけています。忙しいと、家事や食事もおろそかになってしまいがちですが、できる限り身の回りの環境を整える時間を大切にしていたいなって。 ──どうしてそう考えるのでしょうか。 杉咲:私は人生の中のひとつに仕事があると思っていて。そのことを見失わないようにするためですかね。 原:僕はインプットしようとしすぎるとストレスになるから、逆にバラエティを観るようにしています。たとえばこのドラマがめちゃくちゃ面白いって評判になっていても、無理して観ない。観たくなったら観るぐらいの感覚が健康的なのかなと。バラエティを観てる方が気が楽になったり、意外とそっちにアイデアの種が落ちてたりすることもありますね。 ◎取材・文/横川良明 ◎編集/小島靖彦