まだあるヒマラヤ未踏峰…日本の大学生だけで6524m峰プンギ初登頂「宇宙が露出しているよう」
大学山岳部の遠征隊が先月、ヒマラヤ山脈の「プンギ」(標高6524メートル)の登頂に成功した。日本山岳会(東京)によると、プンギはネパール政府が公表している未踏峰。現役学生だけでつくる遠征隊が挑むのは珍しく、隊員たちは「氷と岩に刻んだ自分たちの足跡が道になる。それがうれしかった」と喜びをかみしめた。(渡辺星太) 【動画】日本の大学生がヒマラヤ未踏峰に登頂、周囲は絶景
標高6100メートル付近の斜面に巨大な氷の裂け目が横たわっていた。深さは20メートル。のぞき込むと、もろく、足をのせれば崩れ落ちそうな氷が詰まっていた。
10月4日夕、遠征隊リーダーの井之上巧磨さん(22)(青山学院大)は進退に窮していた。周りには隊員の尾高涼哉さん(22)(東京大)、横道文哉さん(22)(立教大)、中沢将大さん(21)(同)、芦沢太陽さん(21)(中央大)の姿があった。
最終キャンプ地に予定していた場所は氷の裂け目の先にある。しかし進むべきルートは見つからない。この日の登攀(とうはん)は14時間に達していた。
「気力も体力も限界に近づいてる……」。西に傾いていく太陽が、井之上さんたちの険しい顔を照らした。
厳冬期の北アルプスでチームワーク鍛える
5人がパーティーを組んだのは昨年4月に遡る。日本山岳会学生部の定例会で井之上さんが「誰も登ったことがない山を目指そう」と呼びかけたことがきっかけだった。
ネパール政府が公表している未踏峰のリストを調べた。日本隊が挑戦し、途中までの登攀記録を確認できる山があった。それがネパールとチベットの間にそびえるプンギだった。必要な道具や食料をリストアップ。1人当たり100万円の遠征費は、山小屋や古書店でのアルバイトでそれぞれ稼いだ。
ヒマラヤに挑む実力は、国内の山で蓄えた。厳冬期の北アルプス・剱岳や八ヶ岳でクライミングの技術やチームワークを鍛えた。出国する直前、富士山で登山ガイドとして働き、高所に体を慣らしたメンバーもいた。5人の心には、急峻(きゅうしゅん)なプンギの姿が宿っていた。