東武日光線「ギリギリ埼玉県内」の3駅には何があるのか 群馬・栃木・茨城の県境に近い栗橋・新古河・柳生
■利根川をまたぐ通勤通学路線 水辺の町ということは、水害との戦いの町という一面もある。車窓からも見える利根川沿いの公園は、1947年のカスリーン台風で堤防が決壊した地点を後世に伝えるための役割を担う。また、柳生駅周辺は2019年の台風19号では避難エリアに含まれ、駅の職員も避難したという。 水辺の町という点を除くと基本的には椎名駅長が預かる3駅は、通学の学生が中心でそこに通勤客が加わるという、典型的な首都圏近郊路線の特徴を持つ。
栗橋駅の近くには埼玉県立栗橋北彩高校が、また柳生駅の近くには開智未来中学・高校がある。開智未来中高には栗橋駅からバスも出ていて、実質的な玄関口は栗橋駅といってもいい。つまり、朝の通学時間帯、栗橋駅はたくさんの学生でにぎわう駅なのだ。 「あとは、工場の送迎バスも栗橋駅の西口から出ているので、朝は行列ができています。そして何より、栗橋駅はJR線との連絡線があって、直通の特急が東武日光線に入ってくる駅でもあります」(椎名駅長)
JR連絡線がある駅ならではの特徴はほかにもある。 最近で言えばスペーシア Xなど、新造の車両の引き渡しもこの駅でやっているんです。JR貨物さんの機関車で入ってきて、ウチの機関車が引っ張って南栗橋の車両基地まで持っていく。引き渡しは終電後ですが、鉄道ファンの姿もちらほらとありますよ」(椎名駅長) JR線から東武日光線に直通する特急は、いったんJR構内の連絡線に停車して乗務員が交代。その後、デッドセクションを通過して東武の線路へと転線してゆく。かつて、日光への観光客輸送を巡って激しくぶつかり合った好敵手が、いまはタッグを組んで日光・鬼怒川へ観光客を運んでいるのである。
■要衝の駅の1つ隣は? そんなちょっとした要衝の駅である栗橋駅のお隣は、新古河駅だ。駅名は新古河でも、所在地は古河市ではなく埼玉県は加須市内。駅東口の土手を登って渡良瀬川を渡ると、埼玉県から茨城県に入って古河市の市街地が見えてくる。 「新古河駅周辺は向古河という地名で、歴史的にも渡良瀬川を挟んだ古河の町との結び付きは強かったのだと思います。古河の市街地への玄関口という意味合いもあったのかもしれません」(椎名駅長)