「マイナーチェンジじゃない」アテンザ改良で分かったマツダの哲学
変わったことをこれ見よがしにアピールするのはありがちな話だ。デザイナーだって「ちゃんと仕事してます」というためには解ってもらえるように変えなくてはならない。販売の現場だってショールームで一目見て解る位「ほら、新しくなったでしょう?」と言えた方がいい。変わったことがわからないくらいに変えるためにコストをかけるのは難しいという大人の事情もあるだろう。 ただし激変させるということは、そんなに変えないとダメなほど初期型のデザインは酷かったということになる。筋論としては普遍的で美しいデザインにすべきなのだから、大変貌は過去に対する自己否定だ。 だから酷い失敗作でない限り、大きな変化は件の主査の言う通り作り手の事情に過ぎない。マツダは「それをやめるのだ」と言い、その結果が2枚の写真の間にあるものだ。「なんだかんだ言いつつ変えているじゃないか」と思う人もいるだろうし「いや最低限の変更だ」と思う人もいるだろう。それについても主査は、異論や反論があってこそ商品は支持されるときっぱり言い切る。
「変わらないために変える」
「だったらいっそ何も変えなければいいじゃないですか?」と聞くと「リーバイスだってリポビタンDだって、しょっちゅうデザインを小変更しています。それは違うものに見せるためじゃなくて、変わらないものであるための変化なんですよ」。 次はインテリアである。インテリアは写真を見てわかるようにかなり変わった。ナビをインパネ内蔵からオンダッシュ配置に変え、それに伴ってダッシュボードの厚みが変わったためより開放的になった。これについてはデザインを制約していた条件が大きく変わったので、むしろ自由に変えるべきだろう。 新旧を比較するとディスプレイの存在感が明らかに格下げされている。ダッシュボードの中央で額縁に囲まれ、いかにも主役然としていたディスプレイは他の計器と同等の存在感になるように注意深く調整されている。それにはメーターバイザー上に設置された「アクティブ・ドライビング・ディスプレイ」の存在も大きいだろう。この薄い半透明のディスプレイには、速度やナビなどの情報を表示することができる。 つまりメーターとナビの情報の中でチェック頻度の高い最重要情報はこれだけ見ていればわかるようになっている。またその表示はドライバー前方1.5メートルに焦点を結んでいるため、ドライバーは運転中に目の焦点移動距離を軽減することができるわけだ。