「マイナーチェンジじゃない」アテンザ改良で分かったマツダの哲学
マツダのフラッグシップであるDセグメントセダン「アテンザ」とSUV「CX-5」がマイナーチェンジをした。技術説明会の冒頭でいきなり変なことを言いだしたのは商品本部の主査だ。 【動画付き】死の淵からマツダを復活させた1本のビデオ 「マイナーチェンジじゃなくて商品改良です」 正直なとこ「なんだそれは?」と思った。商品を改良しないマイナーチェンジはない。 「マイナーチェンジは新車効果を狙いたい作り手の都合です。そうではなくてお客様目線で、長年乗ってもらった時にいいクルマだなと思える改良をするのが商品改良です」 まあ、それはそうだが、それだけ聞いても全然心に響かない。顧客優先思想なんてもう手あかが付き過ぎて文字にする時、正直ためらう。ただ、ここしばらくのマツダのクルマを見ていると、口先だけじゃない何かがあるのかも知れないと思った。理想を掲げた時、それが嘘八百に聞こえるか、真実に聞こえるかは日々積み上げてきた実績が決めることだ。巧みな話術によって決まるものではない。 試乗の後でちゃんと聞いてみる価値はあるかもしれない。タネを明かすとそれを聞いてみて大正解だった。「それは何故?」を繰り返し尋ねてみた結果、倒産の瀬戸際から復活し、新たなマツダに生まれ変わった血まみれのストーリーを聞き出すことに成功したからだ。
5つの改良ポイント
が、しかしその前にクルマのどこがどう変わったについて書いてしまわないといけないので、それにまずお付き合いいただきたい。その中にもちゃんとマツダ再生ストーリーに重要なパーツが含まれている。 アテンザの改良ポイントは大きく分けて5つある。 (1) エクステリア・デザイン (2) インテリア・デザイン (3) ダイナミクス (4) i-ACTIVSENSE (5) MAZDA CONNECT
エクステリア・デザインについて、マツダは「フラッグシップに相応しい魂動デザインの表現強化」と言っている。そのためには「マツダ顔」の印象を強くした。具体的にはグリル下からライトに回り込むめっきガーニッシュを太くして、その連続線上にLEDランプを仕込んだこと。これは五角形のグリルの輪郭を際立たせる狙いだ。合わせてブラックアウトされていたグリルの横桟(さん)をメッキにしてグリル内にウイング状に配置されていたガーニッシュを廃止した。これらは五角形以外の要素を弱め、五角形を際立たせる処理だ。この他にフロントスカートのフォグランプを小径化してメッキガーニッシュを追加している。 細かく説明されれば違いは解るだろうが、ぱっと見て普通の人が気付くほどには変わっていない。そういう意味では初期型オーナーに優しい変更である。「ああ、俺のは旧型なんだ」と思い知らされずに済む。