城氏が解説「なぜ鹿島は悲願のアジア制覇を果たせたのか」
鹿島アントラーズが悲願だった初のACLタイトルのトロフィーを敵地イラン、アザディスタジアムに高々と掲げた。10万人のサポーターに囲まれブブゼラが鳴り響く異様な空気の中で鹿島は最後まで集中力を切らさずに守り切った。 後半40分過ぎから4度のセットプレーで防戦一方になったが、マークを徹底させ、ことごとく跳ね返して見せた。 第1戦で奪った2点のアドバンテージをどう生かすかが優勝への条件だった。まずは守りから、カウンター、セットプレーでワンチャンスを窺うゲームプランを立てていたのかもしれないが、ホームで2得点しなければならないペルセポリスが意外と序盤は攻撃的にこなかった。 元々は、堅い守備からアリプール、メンシャの2トップのスピードを生かすカウンターサッカーがチームカラー。引かれたチームには、そのスタイルを発揮しにくいのだが、ペルセポリスの、その戸惑いが、点を取らなくとも無失点で優勝できる鹿島の有利に働いた。 慌てず、うまくいなしたのである。 アジアの頂点に立った鹿島の強さを語るとき、最初に記すべきは、その伝統の守備力である。 故障明けの昌子は、まだ本調子ではなかったが、昌子同様に対人に強いチョン・スンヒョンが最終ラインをカバーした。存在感の光ったのが、ボランチのレオ・シルバ。ボールを奪う個の能力もさることながら、そのポジショニングが絶妙で、ペルセポリス攻撃陣の自由を奪った。もう一人のボランチの三竿がバランサーとして機能、組織で守る部分を統率していた。個と組織が融合して非常にバランスのとれたディフェンスになっているのが、鹿島の特徴である。 そしてGKクォン・スンテが最後の砦となって再三のピンチを救った。彼のポテンシャルの高さがなければ、決勝まで勝ち上がれなかっただろう。鹿島だけでなく、川崎フロンターレ、セレッソ大阪、ヴィッセル神戸、コンサドーレ札幌と、JリーグではGKに韓国からの助っ人を起用するチームが目立つが、韓国のGK育成システムに日本も学ぶべき点があるのかもしれない。それほど、クォン・スンテは、鹿島の伝統の守備を機能させるために重要な位置を占めていた。