「一度やめたものを復活させるのは大変だった」 大阪府八尾市の木村石鹸 「非効率な」固形石鹸づくり再開の物語
■「効率」の追求で社会は豊かになるのか? ビジネスでは、何よりも「効率」という価値がものすごく強い。「続ける」という明確な意思がなければ、効率の追求により切られてしまうもの、やめざるを得ないものはたくさん出てきます。 そうやって効率を追求し、非効率なものを排除していった結果、それで実現される世界や社会が豊かだと言えるのか? 僕はどうも違う気がするのです。「固形石鹸」の復活は、どう考えても割に合わないし、非効率すぎます。固形石鹸を商品のラインナップに加えるだけなら、製造を請け負ってくれる会社にお願いするほうが圧倒的に楽です。
でも、それでは意味がない。今回は、すべてゼロから自前でやることにしました。そして、なんとか復活のスタートラインに立つことができた。しかし、ビジネスはこれから。せっかく復活させた固形石鹸。始めた以上は、どうにかして続けていきたいと思っています。 そのためには、ビジネスのバランスを取っていく必要があります。固形石鹸が爆発的に売れて、儲かる日はたぶんこない。でも、続けていけるレベルで収益バランスは取らないといけません。
それは「液体石鹸」や「粉末石鹸」も同じです。釜焚き製法を続けていくためには、ビジネスとしても成り立たせていく必要があります。続けることに価値があるからといって、ビジネスがまったく成立していなければ、さすがに続けていくことはできない。 非効率、でも大切なことを、大切にしながら、どうにかして、そのバランスを取っていく必要があるのです。 【写真】試行錯誤をして復活させた固形石鹸づくりの様子など(7枚)
木村 祥一郎 :木村石鹸工業株式会社 代表取締役社長