「一度やめたものを復活させるのは大変だった」 大阪府八尾市の木村石鹸 「非効率な」固形石鹸づくり再開の物語
屋号に「石鹸」という言葉が入っている以上、石鹸の可能性を広げ、石鹸について誰よりも詳しく、誰よりも石鹸をちゃんと使いたい! そこで、2024年に創業100周年を迎えるのを機に、「固形石鹸を復活させよう」と決断しました。 ■なんとかなるはずが、なんとかならなかった このときは、固形石鹸の製造はそこまで大変ではないだろうと踏んでいました。手作業にはなるけれど、製造場所さえなんとかなればつくれるだろうと思っていたのです。
趣味で固形石鹸をつくられている方はたくさんいらっしゃいます。数人の工房とかで、手づくり固形石鹸を製造販売しているところも全国にいくつもあります。 僕らは固形石鹸はやっていなかったものの、釜焚き製法での石鹸づくりをずっと続けています。液体の石鹸も粉末の石鹸もつくっています。石鹸についての知見もちゃんとある。いわばプロです。固形石鹸も本気でやろうと思えば、すぐにできるはず、と考えていたのです。 しかし、やってみると失敗の連続。まさかこんなに時間と労力がかかるとは思いませんでした。
何もかもゼロからだったので、製造に必要な器具もオリジナルで開発し、処方(油脂の選定や配合比率)も何度も製造してはテストを繰り返して形にしていきました。 気づいたら固形石鹸を復活させようと決断してから、7年の歳月が経ち……。こんなに大変だとわかっていたら、固形石鹸を復活させようなんて考えなかったかもしれません。 このゼロからの固形石鹸づくりを通じて気づいたのは、「一度やめてしまったものを復活させるのは、そう簡単なことではない」というあたりまえの事実でした。
木村石鹸では、創業当時から続けている「釜焚き製法」での液体石鹸製造や、粉末石鹸製造も行っています。この釜焚き製法は、昔ながらの石鹸製造方法。大きな釜で、油脂にアルカリ剤を混ぜ、熱を加えることで反応させて石鹸にしていきます。 液体の場合で5~8時間ぐらい。粉末石鹸にいたっては一日かけてつくったフレーク状の石鹸を4~5日間乾燥させ、水分を飛ばします。その後、何度か細かく粉砕し、最終的にパウダー状の粉末石鹸に仕上げます。