性交渉で起こる精液アレルギーは珍しくない。知られざるアレルギーのはなし(専門家が監修)
アレルギー研究が専門の鈴木慎太郎先生はアレルギーにまつわるさまざまな知識を日夜収集している。そこで、あまり知られていないアレルギーの雑学をお裾分けしてもらった。豆知識から身近なことまで、アレルギーのよもやま話をどうぞ。 [参考文献/『教科書には書いていない! アレルギーのひ・み・つ』(秀和システム))]
教えてくれた人:鈴木慎太郎さん
すずき・しんたろう/昭和大学医学部内科学講座呼吸器・アレルギー内科学部門准教授。大学卒業後、国内外の大学や病院でアレルギー研究や診療を行う。専門は大人の食物アレルギー、アナフィラキシー、アニサキスアレルギーなど。医学博士。
宇宙ステーションでは アレルギーを発症しやすい!?
――ここ最近、アレルギー業界で何かホットな話題はありましたか? 鈴木先生:ひとつは宇宙空間の話でしょう。実はNASAが「宇宙ステーションにいるとアレルギーがひどくなる可能性がある」という報告を出したんです。ステーション内は無重力なのでハウスダストが舞っても下に落ちず、地上の掃除のようなことができない。それに宇宙では窓を開けての換気もできません。今後、地球外居住空間での空調管理技術は進化を求められるでしょうね。
宇宙空間のアレルギー事情
宇宙ステーション内は無重力でアレルゲンが舞いやすく、換気も困難。短期間の滞在ならいいが、長期ミッションの場合はアレルゲンのポットの中にいるような状態に近い。 「アナフィラキシーの自己注射薬《エピペン》も宇宙空間の場合はうまく動作せず、薬剤が毒素に変わってしまうことが報告されています」(鈴木先生)。 人類が宇宙空間で長い時間を過ごすためには、医療を含めまだまだ技術開発が必要になりそうだ。
「月の砂」って 何だかロマンチック。でも無慈悲なところも!?
――確かに想像してみると、咳が出てきそうな環境ですね…。 鈴木先生:宇宙関連の話で言うと、月面の微細な砂「レゴリス」は、吸い込むとアレルギーのような反応が起きることも知られていますよ。
月にあるアレルゲン?
流星など微小天体の衝突で生まれたガラス片や粉末などは「レゴリス」と呼ばれる。地球から月を眺めるとキラキラして見えるのはレゴリスのため。 主要成分はケイ素、チタン、アルミニウム等で、帯電性があるため静電気で宇宙服などにくっついてしまう。1972年に行われたアポロ計画最後のミッション「アポロ17」では、宇宙飛行士の一人が花粉症に似た症状を発症した。これはレゴリスによって引き起こされたものだと考えられている。