『透明なわたしたち』松本優作監督×編集:松岡勇磨 感情をつなげる編集とは 【Director’s Interview Vol.437】
感情をつなげる編集
Q:CMやMVとドラマでは、尺やテンポなど勝手がずいぶん違ったと思いますが、実際にやってみていかがでしたか。 松岡:撮影現場から都度送られてくる素材をもとにシーン毎に編集していたのですが、それらを合体させて1話通して見ると、全然良くなかったんです。監督に初めて見せる時には、「編集あんまり良くないぞ…」という空気が漂っている気がしました(苦笑)。その後「もうちょっと頑張りましょうね」という話になったのですが、それを言われたこと以上に、自分自身でも良い編集とは思えなかった言葉に言い表せない悔しさと、自分の不甲斐なさに打ちのめされました。 そういう悔しいことが何度かありましたが、学生時代に自分で撮影・編集していたときのような感覚もあり、楽しんでやれたと思います。初心を思い出せました。 Q:映画やドラマは、脚本で物語が完成し、撮影で世界観も決まってきます。作品の方向性や完成度において編集作業とはどんな位置付けなのでしょうか。 松本:編集とは、脚本という設計図をもとに素材を組み立て直す作業なのですが、脚本通りに出来ないこともある。もう一度その物語を構成し直すという意味合いもあります。そこが一番大きいですね。“編集を感じさせない編集”が良い編集なのだと思いますが、その上で“感情で見せていく”ことが大事。その人の感情を途切れさせず自然に見せられると良いですね。 松岡:今回の作品を通して学んだところは、まさにそこですね。CMやMVでは、感情というよりもビジュアルで流れを作り、飽きさせないテンポを意識していました。そこに人の感情が乗っかってくるとはどういうことなのか、それを教わったと思います。 松本:多分最初はその感情が繋がっていなかったから、面白くなかったのかもしれません。シーンをどこで切ってどこで繋げるのか、入れ替えも含めていろいろ試していると思いますが、それよりももっと細かい部分が大事になってくる。この1秒があるか無いかで、その登場人物に乗れるか乗れないかが決まってくる瞬間がある。本当に繊細な作業だと思います。 Q:今後はどんな作品を作っていきたいですか。 松本:“自分とは何か”を追求し、今の社会に寄り添うような作品をこれまで作ってきたつもりです。それをライフワークとして今後もやっていきたいですが、ただ同じことをやっていくのではなく、それをもっと人に届けるにはどうすればよいか?そこに挑戦していきたいです。今回はその一つがサスペンスを入れることでしたが、今後はそれがコメディでもいいし、ホラーでもいい。そしてやはり、世界に届けられる作品をちゃんと作りたい。今回の作品も世界に配信されますが、日本だけに止まるのではなく、どうしたら世界に届けられるのか、そこを意識して作っていきたいですね。 松岡:やっぱり映画をやりたいですね。CMやMV、映画やドラマなど、いろんな映像の編集を経験し、それら全てを吸収した上で、新しい自分になれるよう頑張りたいと思います。 監督/脚本:松本優作 1992年生まれ。オリジナル脚本『ぜんぶ、ボクのせい』(22)で商業映画監督デビューをし、その年度の報知映画賞(監督賞)や数々の映画賞にてノミネート。その後『Winny』(23)が公開されると、日本映画批評家大賞にて主演男優賞を受賞するなど、演出も高く評価される映画界最注目の若手監督。 編集:松岡勇磨 1993年生まれ。編集を担当した、西武•そごうのCM「レシートは、希望のリストになった。」篇(21)が、国内外10件以上の賞を受賞。そのほか、MVではMrs. GREEN APPLEや乃木坂46などの編集も手掛け、広告映像からMVまで多岐に渡り活躍の場を広げている。 取材・文: 香田史生 CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。 撮影:青木一成 ABEMAオリジナルドラマ「透明なわたしたち」 9月16(月)から毎週月曜 23:00~ABEMAにて配信中 ※配信後もABEMAで全話配信 ※1~3話は常時無料、4~6話は配信後1週間の見逃し配信期間は無料、その後はABEMAプレミアム会員のみ視聴可能 https://abema.tv/lp/toumeinawatashitachi-onair © AbemaTV. Inc. All Rights Reserved
香田史生
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