「私たちの脳」のなかで「快」と「不快」を感じる場所とその仕組み
「心身の不調は自律神経が原因かもしれない」「自律神経のバランスが乱れている」などとよく耳にします。そもそも、自律神経とはどのような神経なのでしょうか? 簡単に言えば「内臓の働きを調整している神経」。全身の臓器とつながり、身体の内部環境を守っています。自律神経に関わる歴史的な研究を辿りながら、交感神経・副交感神経の仕組みや新たに発見された「第三の自律神経」の働きまで、丁寧に解説していきます。 【写真】ついにわかった「ジムに行かなくても体力がつく」すごい方法 *本記事は『自律神経の科学 「身体が整う」とはどういうことか』を抜粋・再編集したものです。
「快」と「不快」を感じる仕組み
皆さんは「快」を感じる場所が脳内にあることをご存じでしょうか? そのような場所は視床下部の外側部にあります。ネズミのこの部位に電極を埋め込み、電気を流してやると、ネズミはもっと電気を流してくれと電流が流れるスイッチを何度も押して催促するようになるのです。その場所を刺激されると気持ちがいいのでしょう。こうした「快」を感じる部位は報酬系とか快中枢とよばれています。 報酬系は摂食や飲水、性行動などの本能を誘発する部位と重なることがわかっています。本能が満たされると幸せに感じるのは、このためですね。 視床下部には「不快」を感じる場所もあります。こちらは嫌悪系とか懲罰系といった名前がついています。嫌悪系は視床下部の内側部にあり、ネズミのこの部分に電気を流すと、ネズミは電気刺激を回避するようになります。気持ち悪いのでしょうね。嫌悪系はヘスの防衛部位と重なるようです。 防衛部位の活性化によって「防衛反応」あるいは「闘争または逃走反応」が誘発されることは前述しました。その鍵を握っているのが、防衛部位に存在するオレキシン神経であることが近年指摘されています。 オレキシン神経とは、オレキシンという神経伝達物質を含む神経。この神経が室傍核や中脳など脳内の広い範囲に働きかけることで、防衛反応時の自律神経反応の誘発に関わっているようなのです。オレキシン神経が、前章に出てきたCRH神経を活性化させることで、自律神経反応や内分泌反応を誘発している可能性も指摘されています。