「自分の言葉に責任を持たなきゃ」――“パーフェクト超人”三田友梨佳を支える「中居の言葉」
危機感を覚えた三田は裁判や法律、選挙の仕組みなどを一から勉強し直す。 休日を使い、都知事選の演説を聴きに行ったときのこと。聴衆はどんな場面で足を止めるのか。なぜこの候補が支持を集めるのか。有権者の反応に着目した。移転問題で揺れていた築地市場にも足を運び、話を聞いて回った。机上の学習と現場の感覚を組み合わせていくことで、オリジナリティーが生まれた。 「2年くらい経つと、ニュースへの理解が深まり、自分の言葉で話せるようになってきました。やはり、(現場に)足を運ばないといけないと実感しました」
電車の中も取材の一部
2018年、東京・南青山で児童相談所の建設をめぐり、住民が「ランチ単価1600円もする一等地にふさわしくない」などと反対。このとき三田は『グッディ!』で、「そういう表現自体が南青山の品位を下げかねない」と持論を述べてみせた。 昨年、ハロウィンを控えた渋谷の街が奇怪な熱気を帯びると、『Mr.サンデー』で「アメリカはあくまでも子どもが主役。日本のように大人たちがハメを外す要素は全くない」と警鐘を鳴らした。 「(南青山の近隣住民が)他人ごとのように話す言葉を聞いていると辛くて。子は親を選べないですし、親から保護してもらえない子は社会が守るべきです。ハロウィンも、お祭り騒ぎする人たちの警備費に1億円もの税金を使うなんて……。当時は豪雨災害で仮設住宅生活を余儀なくされている方たちを現場で取材していたので、悲しくなりました」 ニュースの現場を見るだけではない。報道の過程からも、細かく情報を拾おうとする。 「例えば、電車の中も取材の一部です。(スポーツ観戦で)スタジアムに向かうお客さんの表情や会話も情報になる。私は会社員だからこそ、満員電車のつらさも知っている。そういうところも含めて、見たこと、聞いたこと、感じたことを大切にしていきたいです」
三田を変えた中居の一言
三田の姿勢に称賛の声は少なくないが、一方でアナウンサーが意見を述べることに批判もある。 「正直、今も葛藤があります。あくまでも情報そのものが主役で、私たちに求められるのはいかに円滑に番組を進行し、視聴者の皆さんに大切な情報を伝えるかです。その上で、ただ伝えるのではなく誰かの心に響く言葉を届けられたら嬉しいです。もちろん自分がすべて正しいと思っているわけではありません。お叱りの声もしっかり受け止め、反省を重ねながら、自分自身成長できたらと思っています」 そんな思考が生まれたキッカケは、ある人物の一言だった。入社2年目、芸能人のゴシップネタを紹介するバラエティー番組で、ゲスト出演した中居正広からこう諭された。 「三田さん、それ自分で調べたの? 見たの? 今の言い方、当事者が見たらすごく傷つくかもしれないよ。アナウンサーは影響力のある仕事なんだから、自分の言葉に責任を持たなきゃ」 芸能界の最前線で30年以上活躍してきた中居の助言には、重みがあった。 「浅はかさを身に染みて感じました。当時は自分のことでいっぱいいっぱいで、相手の気持ちを何も考えていなかったんですね。それ以来、中居さんの言葉を大切に心に留めてきました」