真冬の夜にSL撮影会 昭和浪漫溢れる大井川鐵道ナイトトレイン
厳冬の夜にSLを楽しむ、そんな企画が人気だという。静岡県中部、大井川沿いを走る大井川鐵道の「SLナイトトレイン」。1回の定員は80人。例年応募が殺到し抽選に当選した者だけが参加できるプレミアム企画だ。寒い冬の夜にSL? と首を傾げる方もいるかもしれない。そこで、SLナイトトレインの魅力がどこにあるのか、どんな人たちが参加しているのか取材した。 大井川鐵道、鈴木肇社長「トーマス号は過去にない挑戦だった」
旧国鉄を再現、C10形8号機が客車3両をけん引
真冬に2回だけ運行されるSLナイトトレイン。静岡県島田市にある大井川鐵道・新金谷駅を訪ねると、構内に停車しているSLにカメラを向けている光景が早速、目に飛び込んできた。 SLの動態保存で知られる大井川鐵道。最近は「きかんしゃトーマス号」を運行する鉄道として親しまれている。SLナイトトレインの新金谷駅発車は午後4時21分。ホームでは客車3両を連結したC10形8号機がすでに待機していて、カメラを手にした乗客たちが“主役”に熱い視線を投げかけ、機関士にもシャッターを切っている。大井川鐵道によるとC10形8号機は23両しか製造されなかった希少な蒸気機関車。現存しているのは大井川鐵道だけだという。
出発の時刻が近づき、カメラを構えていた乗客たちがスタッフに促されて茶色の客車に乗り込み始めた。やがてC10形8号機は気笛を鳴らして新金谷駅を出発、冬とはいえ午後4時半はまだ周囲も明るくナイトトレインという雰囲気は感じられない。客車の座席は4人掛けですべて自由席。参加者は思い思いに席を陣取り、まずはSLの旅を楽しむといった風情だ。 それにしても男性が多い。9割以上が男性だ。首都圏から1人で参加した男性、自身も鉄道会社で仕事をしているとのこと。「SLの運転士になりたくて鉄道の会社に入ったんだけど……。親戚がこっちにいることもあって2カ月に1回は(大井川鐵道に)乗っている。SLは秩父や真岡にもあるけど、ここは客車が古いのがいい。SLの写真を撮って、酒が飲めれば最高」と話す。座席の一角には写真機材を入れた大きなバッグが置かれていた。