俳優の名誉毀損記事を配信「ヤフーニュースに責任なし」 最高裁
新聞社の記事が名誉毀損(きそん)にあたる場合、それを載せた「ヤフーニュース」側の責任も問えるかが争われた訴訟の上告審で、最高裁第二小法廷(岡村和美裁判長)は、原告側の上告を退けた。「記事は新聞社の配信で自動的にヤフーニュースに掲載されており、ヤフー側に責任はない」とした一、二審判決が確定した。11日付の決定。 【画像】3社の記事からヤフコメが消えた 苦悩するメディア「我々は傭兵」 原告は俳優の山本裕典さん。判決によると、東京スポーツ新聞社が2020年7月に自社サイトで、山本さんについて「よからぬうわさも多い男性と組んでパーティーを開いた」などと報じ、この記事がヤフーニュースにも載った。 山本さんは記事を出した新聞社だけでなく、ヤフーニュースを運営するヤフー(現LINEヤフー)についても「名誉毀損を助長した」として賠償を求めた。 一審・東京地裁は、記事の内容を「真実ではない」として新聞社に165万円の賠償を命じ、その後に同社の責任は確定した。 ヤフーの責任については、ヤフーが情報の「発信者」といえるかが争われた。プロバイダー責任制限法は、他人の権利を侵害する情報を仲介しても、情報の「発信者」でなければ原則的に責任を負わないとしている。 山本さん側は「ヤフーは契約した会社の記事を配信することで多額の広告収入を得ており、主体的に記事を配信している。『発信者』であり、免責はされない」と訴えた。 ■地裁判決「発信者ではなく賠償責任なし」 この点について一審判決はまず、今回の記事はスポーツ新聞社が直接入稿できる仕組みで配信され、ヤフー側が記事の内容を確認せずに自動的にヤフーニュースに掲載されたと指摘した。 また、ヤフーニュースのトップページに位置し、編集部が一部の記事を選んで載せる「トピックス」に選ばれたわけでもないことなどを挙げ、ヤフー側は「発信者」とは言えず、賠償責任はないと結論づけた。 二審・東京高裁もこの判断を支持した。第二小法廷は11日の決定で、上告ができる理由にあたる憲法違反などがないとだけ判断した。ヤフー側の勝訴が確定した。 ただ、ヤフーニュース編集部が選んで「トピックス」に置いた記事や、編集部が他のメディアと共同で企画した記事などでは、異なる司法判断となることも考えられる。 同社のサイトによると、ヤフーニュースは2023年11月時点で460社のメディア企業と契約し、1日あたり約7500本の記事の配信を受けているという。(遠藤隆史)
朝日新聞社