世間「テクニカルなチームだな」→実際は「カウンター主体のチーム」_SNSは一種の戦略?INAC神戸越智氏が語る、京都精華学園のSNSの3つのポイント
明るく楽しく練習に取り組む京都精華学園高校女子サッカー部。全国3位という躍進の原動力となったのは、「サッカーを好きになり、うまくなりたいという気持ちを引き出す」指導である。2021年度まで同校を率い、現在はINAC神戸レオネッサでアカデミー統括部長を務める越智健一郎が語る「サッカーに必要なメンタル」。今回は、スポーツ界に限らず、関心が高まっているSNSの使い方について述べる。 ※本記事はサッカー指導者向け専門誌『サッカークリニック』2025年1月号から転載 取材・構成/鈴木智之
|SNSは、やりながら学んでいくもの
今回のテーマは「SNSの使い方」です。私がSNSをどのように使いながら、選手たちのモチベーションを高めたり、チーム力の向上につなげたりしたかをお話ししていきます。 私が京都精華学園高校にいた頃は、練習の雰囲気がわかる動画および写真を選手たちがフェイスブックやインスタグラムにアップしていました。SNSの良いところは、自分たちの活動を発信できること。そして、今の若い子たちにとっては、フェイスブックやXよりも、インスタグラムやTikTokが主流です。 四国のある強豪女子高校の指導者は、いつも一眼レフのカメラを持ち歩き、選手たちの写真を撮っています。それをインスタグラムにアップするのですが、今どきの感じで、センスの良さを感じます。一見、コワモテな外見とのギャップに驚きました。 その先生が言うには、インスタグラムを見た子が体験練習に来てくれるそうです。また、自分たちのチームカラーがインスタグラムを通じて伝わるとも話していました。 京都精華学園時代の私は、選手のSNSについて、禁止も管理もしていませんでした。SNSは、卒業して大人になれば、絶対についてまわります。高校時代からなじませた上で、何かあった場合には注意するなど、やりながら学んでいくものだと考えました。ただし、SNSには危険性があるので、投稿する側のバランス感覚やリテラシーが問われます。例えば、誕生日の選手に、お祝いとして、みんなが水をかけた動画を上げたとします。すると、「公共の場で大きな声を出している」「いじめにつながるのではないか?」と捉えられることがあります。 チーム内のノリも、SNSでは誤解されやすいと言えます。公開しても良いものといけないものの区別について、扱う人のセンスがポイントになります。 私は、外部への発信には責任を伴うので、楽しさを見せつつも、一線を越えないように気をつけていました。ときには批判的なコメントが匿名でくるので、注意が必要です。 京都精華学園において、SNSは、かなりオープンでした。学校から何かを言われることはなく、私は、トレーニング風景や試合の合間の様子などを自身の個人アカウントにも上げていました。当時は一風変わった練習が多かったのですが、それを見て、こういうサッカーをやりたいと入学してくれる子がいたのです。 「明るく、楽しい」というチームのモットーは、全国大会で結果を出しただけでは伝わりません。その魅力を発信できたという意味で、SNSの影響力は非常に大きかったと感じます。