世間「テクニカルなチームだな」→実際は「カウンター主体のチーム」_SNSは一種の戦略?INAC神戸越智氏が語る、京都精華学園のSNSの3つのポイント
|編集は、選手が担当。グループで回した
当時の私は、世の中に発信するパブリックイメージを逆手にとっていました。 「京都精華は、パスやドリブルを織りまぜるテクニカルなチーム」というイメージを植えつけていたのですが、実際には、堅い守備をベースにした上で、ゴール前でテクニカルな技術を発揮して、ゴールを奪う、カウンター主体のチームでした。一種のイメージ戦略だったと言えます。 当時は、動画を編集し、それを共有する取り組みを行なっていました。紅白戦の映像から、2、3分のダイジェスト動画を作成。良いシーンと悪いシーンを抜き出し、全員で共有するのです。その編集は、選手が担当しました。私がやったことは、1度もありません。1人に負担がかからないように、グループで回していました。 映像制作のグループは、異なる学年の選手で編成しました。普段はあまり接しない選手同士がコミュニケーションをとるようにしたのです。これは、重要な仕掛けの1つでした。先輩後輩の壁をなくし、チーム内の風通しを良くするために、あえてそうしました。 前述したインスタグラムの投稿は、サッカーのプレーそのものよりも、チームの雰囲気を外部に発信することが、主たる目的でした。その際も、普段の仲良しの集まりとは違うグループ編成で、動画を作成したのです。 試合の映像は、校舎の上のほうから撮影しました。重要なシーンを抜き出し、得点場面、失点場面、チームコンセプトに合う良いプレーなどを選手たちが自主的にピックアップしました。 こちらからは特に指示しませんでしたが、ディフェンスのシーンを取り上げるグループが多かったです。これは、私が何を重視するか、チームとして何を大切にするかが、選手たちに伝わっていた証拠です。インターセプトの場面、ヘディングで競り勝った場面、ディフェンスラインがきちんと下がった場面などをピックアップしてくれたので、互いの確認作業をする際に役立ちました。 映像の良さは、こちらの指導がどれだけ浸透しているかを理解できること、そして、選手たちの頭の中がわかることです。あまり理解していないなと感じることもありましたが、そういった点を確認する意味でも有効でしょう。理解不足を把握できるのは、指導者側のメリットです。 中には、BGMをつけたり、テロップを入れたりと、凝った編集をしてくる子がいます。ただし、2、3分程度にとどめるようにしました。ポイントを絞った内容にしたわけです。あまり長いと、つくる側にも見る側にも、負担になります。 編集グループは、選手のポジションのことは、あまり考慮しませんでした。気をつけたのは、Aチームだけ、同じ学年だけなどにならないようにしたこと。紅白戦のメンバーは毎回変わりますが、そのチームでグループを組むこともありました。 グループの編成を変えると、さまざまな視点や発見が生まれます。同じメンバーだと、編集が好きな子や得意な子など、特定の子だけが作業することになりかねないので、メンバー構成を変えるようにしました。全員がまんべんなく関わることによって、チーム全体としての理解力が向上しました。