デジタル最新機種に受け継がれる「初代ライカの価値観」を歴史から紐解く
70年代・80年代に入ってからも、ニコンF2やF3、キヤノンF-1、ミノルタX-1、ペンタックスLXといった国産最高級一眼レフがせいぜい10万円台前半ぐらいの予算で購入可能だったところ、ライカは機能的には時代遅れといっていい内容でありながら、当たり前のように40万円、50万円といった売値がつけられていた。 ライカが今日まで生き残ったのは、ブランドの神通力と言っても過言ではないだろう。 しかし神通力には、中身がなければならない。デジタルカメラの時代に入ってから、ライカは着実に独自の存在感を放ち始めている。最近では、古き良き時代の距離計連動式カメラM型の流れを汲むクラシックなMシステム、35mmフルサイズより60%も大きなフォーマットを採用したSシステム、フルサイズミラーレスのSLシステム、フルサイズコンパクトカメラのQなどなど、意欲的にラインアップを拡充している。
デジタル最新機種にも受け継がれる「初代ライカの価値観」
今回発表されたCLは、APS-Cシステムの最新機種になる。フルサイズよりはひと回り、ふた回り小型だが、普及価格帯のコンパクトカメラと比べればかなり大きなAPS-Cフォーマットは、日本製のカメラにも多く採用されてきた。ここでいうフォーマットとは画像を記録するイメージセンサーのサイズのことで、フルサイズは35ミリ判フィルムと同じサイズを意味する。大雑把にいえばセンサーのサイズは大きいほど画質面で有利だが、APS-CはニコンD500やキヤノンEOS 7D MarkIIなどプロカメラマンも仕事に多用しており、普通に考えて十分なサイズのフォーマットといえる。 ライカカメラ社では、CLについて「こだわり」、「一貫性」、「クラフツマンシップ」といった初代ライカからの価値観を、時の流れが速い現代によみがえらせたカメラであるとアナウンスしている。 SLやTL2と共通のTLマウントを採用しているレンズ交換式ミラーレスカメラとして登場したCLだが、このCLという機種名に郷愁を感じるカメラ愛好家は少なくない。ミノルタと提携していた70年代、同じライカCLという名称のカメラがミノルタで生産されたのだ(日本ではライツミノルタCLとしてWネームで販売)。CLは、コンパクトライカを意味する。日独の技術の粋を尽くしたCLが、デジタルカメラとして生まれ変わったといえなくもない。 横131 x 縦78 x 奥行45 mm、バッテリー込みで405gのコンパクトなボディの中に、ライカならではの実用的でありながらエレガントなデザインと最新の電子技術が結集。トップカバーとボトムカバーにはアルマイト処理を施したアルミ削り出しのパーツを使用し、その間にレザーが貼られた3ピースのデザインがコンセプト。操作性は直感的で快適、撮影した写真をワイヤレスでスマホやタブレット、PCに転送できるWi-Fi機能も備えSNS時代にもきちんとフィットさせている。M型の時代からライカといえばファインダーのクリアな見えが魅力だが、CLにはクォリティーの高い約234万ドットの電子ビューファインダーが搭載された。イメージセンサーは約2400万画素。フォーカスも、49点のAFエリアを持つ高速AFで快適だ。4K動画(30fps)も撮影できる。 日本での希望小売価格は本体36万7200円、同時発売の18mmレンズが15万6600円(ともに税込)。高価な買い物ではあるが、いまや日本製カメラでも数十万円という価格は珍しくない。ライカの中ではリーズナブルな価格帯に抑えられている。 また、ライカが優れているのは機能的な面だけではない。現在、世界18カ所にギャラリーを独自に展開、そのうちの2つが東京と京都にある。ライカのカメラ開発は、写真というカルチャーの創造と表裏一体。そんな伝統が、きちんと守られているのが素晴らしい。 誰もがスマホで写真を撮ってSNSで写真を共有する時代。ライカCLのような所有感を満たしてくれるカメラで、大人のたしなみとして写真を撮ってみるのも一興だ。SNS映えすること間違いないだろう。