モスクワテロ、「犯人はIS」は本当なのか、ロシアが疑っている「真犯人」とアメリカに「都合がいい犯人」
■ロシアはウクライナ関係者の犯行を疑っている 事実、ロシア政府はアマーク通信で流された犯行声明について何も言及しておらず、犯行声明自体に信をおいていないようだ。ロシアはむしろ、ウクライナ関係者の関与を疑っている。 例えば、メドヴェージェフ安全保障会議副議長は、「もしこれがキエフ政権のテロリストだとしたら、国の要人であったとしても見つけ出して抹消する。死には死を持って償わせる」と強い調子で述べている。
一方、ウクライナのポドリャク大統領補佐官は、ウクライナの関与を即座に否定している。それどころか、この事件がロシアによって、戦争のプロパガンダの強化、軍国主義化の加速、動員の拡大、そして最終的には戦争の開始の正当化に使われることは疑う余地がないとまで述べている。 ウクライナ側は、今回のテロリズムがウクライナに結び付けられて、報復の口実とされ、最悪の場合は開戦理由とされることを恐れているのである。これこそが、ロシアによる自作自演説が生まれる理由ともなっている。
それはともかく、ウクライナにとって最悪なのは、ウクライナ政府の正式な指示とは無関係に、ウクライナ側の何らかの勢力がテロリズムに関与しているという事態だ。 例えば、2022年9月に起きたロシアとドイツをつなぐ海底ガスパイプライン「ノルドストリーム」の爆破事件の際、実行犯についてはロシア自作自演説など諸説が流されたが、昨年11月、実はウクライナ特殊作戦軍の大佐だったという調査報道をアメリカのワシントンポストと、ドイツのシュピーゲルが報じている。
さらに、同年11月にはポーランドにミサイルが落下した事件で、ウクライナ側は即座にロシアを非難したが、実はウクライナ側のミサイルだったことが判明したこともあった。 ■ウクライナ関係者による犯行で困るのは… 今回のテロ事件で仮にウクライナ側関係者の関与が明るみに出れば、国際社会のウクライナに対する支持が揺らぐだろうし、何よりも、ポドリャク補佐官が言うように、ロシアが軍事作戦のレベルを強化する可能性もある。