なぜ人は外反母趾になる? 実は「物をつかまなくなった親指」が関係 進化が生んだ病だった
外反母趾になる原因は?
しかし、外反母趾の正確な原因はまだ明らかになっていない。遺伝も一役買っているようだ。痛みを伴う外反母趾の患者350人を対象とした2007年の研究では、3世代以内の家族に外反母趾の病歴のある人が90%を占めた。 関わっているのは遺伝だけではないと、米国フロリダ州オーランドで開業する足病医・外科医のティモシー・ミラー氏は述べている。「2番目に多い原因は足の形です」。足のアーチが低い人は、親指周辺の筋肉や靱帯が緩んでいるため、外反母趾になりやすい。 靴も外反母趾の原因になるのだろうか? もちろんだとミラー氏は言う。「私たちは本来、草原や柔らかい地面を歩くようにできています」と氏は話す。「現在、私たちは硬い床やコンクリートを歩いていますが、多くの靴は全くサポート性がありません」。サポート性のない靴は、腰や背中を守るために足が「犠牲」になるため、外反母趾などの変形が起きやすい。
外反母趾の治し方
サポート性のある靴を履くことで、外反母趾の進行を遅らせることができる。また、痛みを和らげるには、ストレッチやアイシング、薬物療法が効果的だ。しかし、いったん外反母趾になると、治す方法は1つしかない。 「残念ながら、外反母趾になってしまった場合、元に戻す方法は手術しかありません」とミラー氏は話す。氏は外反母趾の手術を年間数百件、通常は外来で行っている。 症例によって異なるが、ほとんどの外反母趾の手術では骨の一部を取り除き、足の支持構造を整え、プレートやワイヤで結合組織を補強する。場合によっては関節の置き換えや固定が必要になるが、これほど大きな手術になるケースは少ない。 回復には数カ月かかることもあり、足病医は、外反母趾の手術は美容整形ではないと強調している。しかし、手術による体への傷や負担はどんどん小さくなっており、回復に要する時間が短く、より良い結果が期待できる手術法も登場している。ただし、やはり症例によって異なるとミラー氏は述べている。 手術が唯一の治療法ということもあってか、インターネット上には、外反母趾の痛みを和らげるためのとっぴで、しばしば無益なアドバイスがあふれている。自宅で行っている対処について、患者からどのような話を聞いたことがあるかと質問すると、ミラー氏は苦笑した。 「エプソムソルト(硫酸マグネシウム、入浴剤として使われる)で何でも治ると思っている人や、リンゴ酢に足を浸す人もいます」とミラー氏は話す。もちろん、どちらも外反母趾を治す効果はない。 インターネットは実際のところ、外反母趾の信頼できる情報を得るには最悪の場所であることがわかっている。2013年の調査では、外反母趾に関連するウェブサイトのうち、正確で最新の情報が載っていると評価されたのはわずか24%だった。また、2022年の分析では、外反母趾に関するオンライン情報源の3分の2近くが透明性を欠いていた。