静岡、伊豆に行ったら見るべき!? 小説家・井上靖が実際に住んでいた小説『しろばんば』の舞台「上の家」とは?
●文学作品ゆかりの地、伊豆
伊豆と聞くと、温泉や自然豊かなイメージがありますが、多くの文学作品の舞台となっている地としても有名です。 【画像】伊豆に行ったら見るべき「上の家」ってどんな場所?(5枚) 例えば、川端康成の『伊豆の踊り子』や太宰治の『斜陽』、尾崎紅葉の『金色夜叉』など、一度は名前を聞いたことのある小説のゆかりの地となっています。 現在でも伊豆には小説に登場する場所は数多く残されており、文学の郷として観光客が絶えないエリアです。
特に井上靖の『しろばんば』は、作者自身が伊豆市で幼少期を過ごしたことを踏まえて伊豆を舞台としています。 『しろばんば』とは、主人公である井上靖の分身、洪作少年が伊豆市湯ケ島の自然のなかでどのように成長していったかを表現した自伝的小説です。 実は、その小説の中に登場する「上の家(かみのいえ)」がほとんど当時のまま残されています。 「上の家」とは、作中で洪作少年が実際に生活していた家で、実際に井上靖の本家に当たります。さらに、物語の重要な舞台となっている場所です。 では、なぜ重要な舞台の地を公開することになったのでしょうか。伊豆市観光協会天城支部の担当者は次のように話します。 「『上の家』は、10年近く前に空き家となっていたのですが、所有者が井上靖のファンの為に公開したいといった思いがありました。 また、伊豆周辺は川端康成や梶井基次郎などの文豪のゆかりの地でもあり、観光地としての側面もあります。 文学に関する観光資源の1つとして公開することで、さらなる観光客の誘致ができると考えたため、上の家を所有者から観光協会が借り受けて5年前から観光協会が維持管理・運営を行っています」
●「上の家」を観光資源にするまで
観光資源として活用されている上の家ですが、明治時代に建てられたということもあり老朽化が進んでいました。 そのため保存改修工事を行い、その当時の様子を前出の担当者は次のように話します。 「建物の構造自体はしっかりした木造の骨組みなので、地震や風雨にも耐えていたということです。 しかし、なまこ壁が施された趣のある外観は老朽化が激しく、漆喰の壁紙などがはがれてしまいました。 そこで、地元や全国の井上靖ファンの寄付、行政の補助の上、できるだけ建物の景観が変わらないように改修を行いました」