オスプレイ墜落1年 低空飛行や騒音、消えぬ不安「危険性変わらず」
鹿児島県・屋久島沖で米空軍輸送機CV22オスプレイが墜落して29日で1年になる。一時停止していたオスプレイの飛行は3月以降、順次再開され、日米の機体が各地を飛行している。一方、事故は部品の破損が原因の一つとされているが、詳細は明らかになっていない。住民らは不安の目で上空を見つめている。 【写真で見る】オスプレイの残骸とみられる漂流物 「近ごろは飛んでいるのを見かけないので話題に上らないが、事故が起きる危険性は1年前と全く変わっていない」。屋久島町議の真辺真紀さん(51)はそう説明する。オスプレイの目撃情報こそないものの、米軍機の爆音は山の多い島内でよく響く。「同じような事故がいつでもどこでも起こり得るという現実を突きつけられた。心配している人は多い」と変わらない不安を訴えた。 米軍の調査報告書などによると、事故は2023年11月29日午後2時40分ごろ、屋久島の東約2キロの沖合で発生。嘉手納基地(沖縄県嘉手納町など)へ向かっていたCV22が回転しながら墜落し、搭乗員8人全員が死亡した。変速装置(ギアボックス)内のギアの破損による左翼の故障と、人為的な判断ミスが原因とされるが、なぜギアが破損したかは不明だ。 一方、3月以降、国内での運用が順次再開され、日米双方が共同訓練などに投入している。市民が機体を間近にする場面も目立ち、宮崎県延岡市では今夏、低空飛行の目撃情報や騒音を訴える声が相次いだ。奄美空港(鹿児島県奄美市)では今月14日と21日、事前の届け出なしに着陸している。 奄美市の養護老人ホーム「なぎさ園」の渡寛之施設長(48)は最近、毎日のようにオスプレイを目撃しているという。「ものすごく低い高度で飛び、入所しているお年寄りも怖がって耳を塞いでいる」と困惑した様子で語った。 沖縄国際大の前泊博盛教授(安全保障論)は「日米共同訓練は大規模化しており、それに伴ってオスプレイが市民に目撃される地域も拡大している」と語る。その上で「制限もなく日本での飛行が再開されて、既にトラブルが発生している。機体の構造問題が解決されないまま、自衛隊が積極運用するのは大きな疑問が残る」と指摘した。【取違剛、中里顕】 ◇オスプレイ 垂直離着陸ができる回転翼のヘリコプターと、高速で長距離の飛行ができる固定翼機の機能を併せ持つ輸送機。英語でタカの仲間のミサゴを意味する。開発段階から事故が相次ぎ、安全性が不安視されてきた。米軍オスプレイは普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)、横田基地(東京都福生市など)に配備され、岩国基地(山口県岩国市)への配備も進む。防衛省は陸自木更津駐屯地に暫定配備しているV22オスプレイを2025年7月に佐賀空港(佐賀市)に配備する予定。