韓流だけではない。「Kフード」を世界に売り込む韓国の狙い 産業クラスターで企業全面支援でブランド化促進
韓国政府が、世界的な韓流ブームを追い風に食品輸出の拡大を狙っている。ドラマや映画で韓国食品が頻繁に登場し、各地の視聴者の関心が高まっているためだ。政府は「革新成長の中心」とした産業集積地で、企業を全面支援。世界で「Kフード」としてブランド化し、シェア拡大と競争力強化を図る。(共同通信 光山正一) ▽北米でキムチふりかけ 「輸送時に強い衝撃を受けても破裂しないパウチを新たに開発した」。韓国南西部全羅北道益山市の産業集積地「フードポリス」(232ヘクタール)の研究施設で、男性職員が桃が入った透明のパウチを勢いよく地面にたたきつけてみせた。桃は無傷だった。 フードポリスは農林畜産食品省主導で2017年に完成した。進出企業には食品試験、試作品製造、包装といった開発面に加え、販売や物流支援など海外進出に必要なノウハウを提供する。法人税減税も適用されるほか、開発力に乏しい小規模事業者には最新技術を利用できるメリットがある。
2024年8月現在、中小から大企業まで125社ほどが進出している。インターネット通販大手アマゾン・コムを通じ、北米で新開発のキムチふりかけを販売するなど成功例も出ている。 即席ラーメンや調味料を主力とする食品企業「毎日食品」のオ・スミン常務理事は30カ国で販売展開し「売り上げが伸びればさらに工場を増設したい」と話す。 ▽ドラマや映画で高い関心 韓国政府によると、韓国産の農林畜産食品の輸出額は、2019年の70億ドル(約1兆円)から伸び続け、2023年は91億ドルまで拡大。主な輸出先は日本、中国や台湾、米国、東南アジアで、即席ラーメン、菓子類、米加工食品が上位に入る。 ソン・ミリョン農林畜産食品相は好調の要因について「韓流ブームを背景に生産者の努力と政府の政策的後押しが奏功した」と分析する。人気ドラマや映画で登場人物が即席ラーメンや菓子を食べる様子が、海外視聴者の関心を集めている。人気K―POPグループ「BTS」のメンバーによるインスタグラムでの投稿や、食事風景を撮影した「モクパン(食べる放送)」ユーチューバーの影響も大きい。
韓国政府は、韓国食品の輸出額を2027年までにほぼ倍増させることを目標に掲げる。農林畜産食品省の国家食品クラスター推進チームのキム・シンジェ課長は「韓流ブームに頼らなくても品質や安全性の高さが評価され、輸出拡大が続くよう引き続き信頼醸成に努める」と語った。