バレンティン逮捕 日本と異なる米国の法律事情
■日本と比較し逮捕者の多いアメリカ ちなみにDVに限らず、大リーグでは現役選手の逮捕者は日本に比べると多い。球宴選出4度、Kロッドことフランシスコ・ロドリゲス投手(FA)は、2010年8月に、恋人の父に暴行を働いたことで逮捕され、当時所属していたメッツから2日間の出場停止処分を受けている。それで、親指を痛めて残りシーズンを棒に振ったのだから、実に愚かな行為だった。他にも、レッズのマイク・リークは2011年に百貨店メイシーズでTシャツ6枚(60ドル相当)を盗んだとされ、30時間のコミュニティーサービス(地域奉仕活動)を命じられ、05年パドレスのドラフト1位右腕シーザー・カリロは、タンパのホテルで、不法侵入で逮捕され、500ドルの保釈金で釈放されている。 フィールド内の行為で逮捕された選手もいる。2度の球宴選出のホセ・オファーマンは、独立リーグの試合中、投手と審判に暴行を働いて逮捕されたし、04年にはレンジャーズの右腕フランク・フランシスコが、試合中にファンにパイプ椅子を投げつけて負傷させ、逮捕されている。 大物といえば、先月殿堂入りしたトニー・ラルーサ氏(元カージナルス監督)も、07年の春季キャンプ中に飲酒運転で逮捕された。車の点滅ライトをつけて、シートで眠り込んでいた同氏のアルコール検出テストで、規定量以上の飲酒が分かり、現行逮捕されたが、7時間の拘留の後、2500ドルを支払って保釈された。この後、同氏はファンに謝罪し、ダグアウトに入ってオープン戦の指揮を執っている。 ■即、解雇になるケースは稀 メジャーでは、実刑判決を受ける重犯罪でなく、通常保釈金数百ドルで済む犯罪の場合、契約破棄にされることはない。大リーグは薬物違反に厳しく、民事には不介入と言えるかもしれない。スポーツ選手において逮捕で即、解雇となった例は、第一級殺人罪で逮捕されたNFLペイトリオッツのヘルナンデス元選手のようなケースくらいだ。 今回の事件では、バレンティンが離婚調停中という複雑な事情もあり、事情聴取など捜査は長引くかもしれないが、“逮捕”という言葉で、なんでもかんでも、イコール、“解雇につながるほどの犯罪者”と結びつけるのは、アメリカの場合は、少し間違っている。裁判で有罪になれば別だろうが、バレンティン逮捕の行方は、慎重に見守っていたほうがよさそうである。