ビヨンセから衣装の依頼が…パリコレの影響力を、「ANREALAGE」デザイナー・森永邦彦が語る
ANREALAGE流パッチワークの特徴
そうこうしているうちに、森永さんを乗せた「BMW M850i xDriveグランクーペ」は、東京・国立にあるANREALAGEのアトリエに到着。ここでは、ブランドのアイコンとなっているパッチワークが作られている。 森永:ANREALAGEでは毎回テーマを設けています。そのテーマに合わせて、毎回、コレクションの内容をガラっと変えるのがブランドの特徴です。その中でも、ブランドを始めた当初から今までずっと続けているものがパッチパークです。普通のパッチワークであれば、四角や三角など決められた形の型紙を作って、ある程度の規則の中でパズルのように縫い合わせていく。一方で、ANREALAGEが志向するのは、そういうルールを超えたパッチワークです。まずパターンがない。たとえば、100パーツ縫われていたとしたら、100パーツすべてが違う形となっています。一つのパーツの大きさは、通常10cm程度でも小さいと言われますが、僕らは3cmくらいで、細かいものだと1cmくらいのものさえある。このため、一着を作るパッチワークのパーツ数としては、多いものだと4000枚くらいを要します。なので、パッチワークという名前ではあるのですが、パッチワークのイメージを超えていくような極端なものを作っていると言えるかもしれません。一つのパッチワークの中で様々な質感や色合いを持った素材、つまり、全然違う世界からきたものを一つに繋ぎ合わせていく。それこそが、ANREALAGEが表現してきたブランドテーマの根本であると、最近になって感じますね。 ANREALAGEブランドのアイコンでもある手作業のパッチワークはとにかく工程が多く、完成するまでに時間のかかるアナログな作業。ブランド立ち上げから現在まで20年間、森永さんの中学生時代の友人・真木大輔さんが担当しているそうだ。 そんな飽くなき探求心と情熱を持って、ファッションアイテムを作り続ける森永さんにとって「未来への挑戦=FORWARDISM」とは何か?--尋ねると、こんな答えが返ってきた。 森永:毎回新しいコレクションを発表することで、これからの時代の洋服を作りたいと考えています。近年は、自分の中で、進めば進むほどむしろ回帰していくような感覚が強くなっています。それはブランドを始めた頃かもしれないし、まだ、ファッションを知らない頃かも知れない。パッチワークが色濃くなってきているのもそうです。何か、一直線に進んでいくのではなく、もっと同じ場所を何回も回りながら、それでいて、高くなったり、深くなったり。らせん的な進み方をするようなところに未来があってほしいと思います。 (構成=小島浩平)