「統合作戦司令部」設立で自衛隊の戦い方はどう変わる? ついに始まる「70年目の大改革」を『シン・ゴジラ』のケースでプロが解説!
確かに、この両者の役割を統合幕僚長がひとりで担う(ワシントンDCのペンタゴンとハワイの司令部双方との調整をしつつ、作戦指揮も執る)従来の体制は、かなり無理がありそうだ......。 ■最初の仕事は米空軍の引き留め? 一方、かつて航空自衛隊那覇基地302飛行隊隊長を務めた元空将補の杉山政樹氏は、「台湾有事より前に、統合作戦司令部にはやるべきことがある」と指摘する。 「ここ最近、アメリカ側から『在日米軍をどうにかして減らすことができないか』『自衛隊がその代わりになれないか』といった議論が相当出てきています。米空軍は貴重な航空戦力が"最初に殴られないこと"を重視するので、中国との最前線に常駐することをよしとしない考え方があるということです。 これは個人的意見ですが、この流れに一定の歯止めをかけることが、新たなカウンターパートとなる統合作戦司令部の仕事だと思うのです。 なお、この流れは今に始まったことではありません。以前も米空軍の改編に絡めて、極東地域に米空軍戦力を置かなくてもいいのではないかという議論が持ち上がったことがありました。当時、その流れに危機感を持った空自は、BMD(弾道ミサイル防衛)の日米統合運用を強調し、引き留め策を講じたのです」 つまり、中国と対峙する日本にとっては、「一緒にできることがこれだけありますよ」と米空軍に提示することで、引き留めを図ることが重要だというのだ。 「すでに沖縄・嘉手納基地のF-15戦闘機部隊は撤退を始めています。その後、青森・三沢基地のF-16戦闘機40機、EA-18G電子戦機6機をつなぎ留めるために、自衛隊の統合作戦司令部は日米の共同作戦案を提示する必要があるでしょう。 これは山口・岩国基地の米海兵隊飛行隊に所属する艦載戦闘機FA-18やF-35Bにしても同じことです。そのつなぎ留めが日本の防衛に直結するわけですから」(杉山氏) その仕事は部隊指揮だけではないということだ。 取材・文/小峯隆生 写真提供/防衛省