「統合作戦司令部」設立で自衛隊の戦い方はどう変わる? ついに始まる「70年目の大改革」を『シン・ゴジラ』のケースでプロが解説!
それを踏まえて、統合作戦司令部発足後の2025年に「巨大不明生物=ゴジラ」が出現した場合の、自衛隊の対応フローを考えてみたのが図表3だ。 対ゴジラ作戦は、統合作戦司令部が陸海空の司令部と調整の上、策定する。映画のように陸海空幕僚長が本格的に参加することはなく、四つ星の統合作戦司令官が三つ星の陸海空司令官と議論をするため、極めてスムーズなやりとりになる。また、統合幕僚長はこのやりとりをモニターするだけでよく、総理大臣・防衛大臣への補佐・助言に専念できる。 ちなみに、新設される統合作戦司令部は総計240人となかなかの大所帯になる。 「総合的な意思決定は司令官が担いますが、組織の特徴としては統合幕僚監部の総務人事(J1)、情報(J2)、作戦(J3)、ロジスティックスサポート(J4)、軍政(J5)、通信(J6)、開発(J7)のうち、作戦(J3)を特に強化した形で構成されることになるでしょう」(伊藤氏) ■台湾有事などでの米軍との連携は? また、今回の組織改編は、国内での任務以上に米軍との複雑な統合作戦でより生かされることになる。 従来の体制では、ハワイにいるインド太平洋軍司令官のカウンターパートは、日本側では「参謀」の統合幕僚長だった。しかし今後は、部隊を指揮する司令官同士の連携がよりスムーズになることが期待されるという。 「今、最も懸念されている中国の台湾侵攻を例にとりましょう。中国軍は艦隊を展開して台湾をグルリと取り囲み、封じ込める作戦に出るはずです。それを止めるために米海軍は第七艦隊を展開させ、『勝手なことをするな』と圧力をかけることになります。 日本政府はまず『重要影響事態』と事態認定するでしょうから、自衛隊の統合作戦司令官は、米海軍の兵站を支援する任務を指揮することになります。 ただし、もし中国軍が米海軍空母などを攻撃した場合、日本政府が『存立危機事態』と事態認定したならば、自衛隊には『防衛出動』が下令される。米海軍を守るために海自の自衛艦隊や空自の航空部隊が出動し、統合作戦として中国海空軍と戦うことになります」(伊藤氏) 統合幕僚長と統合作戦司令官は、侵攻が予測される頃から動き始める。 「統合幕僚長は日本政府、つまり総理大臣が事態認定するための補佐をする。また、米本土のペンタゴン(国防総省)の統合参謀本部議長と戦略的な調整も行ないます。 一方、統合作戦司令官は事態認定されることを前提に、陸海空司令官と作戦準備などを始めます。海空作戦については、航空総隊司令官と自衛艦隊司令官の作戦を統合し、またインド太平洋軍司令官とは、攻撃目標の整合やターゲティングなど戦術的な調整をすることになります」(伊藤氏)