W杯当落線上の久保建英が語った序列をアップさせるための条件とは?「フィジカルよりスピード」
相手ゴールに近い位置で久保がファウルを受ければ、必然的に日本のチャンスが生まれる。例えばガーナ戦の前半16分。パスを出した直後に相手選手のタックルを受けた久保が倒された直後に、ガーナのファウルを告げる主審の笛が鳴り響いた。 場所はペナルティーエリア右角のわずかに外。距離にして約18m。右足で蹴るのならMF柴崎岳(30、レガネス)、左足ならば久保という絶好のチャンスで、久保が放った直接フリーキックはゴールの枠を大きく外れてしまった。 「フリーキックに関してはいい感じで仕上がってきているので、昨日のキックはちょっともったいなかったと思っています」 自らのミスだったと久保は素直に認めた。それでも「本当に言い訳じゃないけど」と断りを入れた上で、大人でだいたい11歩、正確には10ヤード(9.15m)以上離れなければいけない壁が「近かったんですよね」とつけ加えている。 「昨日の壁は特に。正直、11歩なかったと思うんですけど、それで壁の上を越さなきゃと変に力んでしまって、いつも通りのキックができなかった。ならば自分がボールを半歩分とか、一歩分後ろに置き直すべきだったんですけど、あまりにいい場所だったので後ろにずらしたくもなく、自分のキックもできず、という感じでしたね」 得点の3割がセットプレー絡みと言われるようになって久しい。相手が強くなるほどセットプレーの重要性が増すなかで、森保ジャパンではアジア最終予選の10試合でコーナーキックだけでなく、フリーキックからもゴールが生まれなかった。 特に直接フリーキックをゴールに叩き込んだのは、MF原口元気(31、ウニオン・ベルリン)が2度マークしているだけだ。中村俊輔から遠藤保仁、本田圭佑へ受け継がれてきた名手の系譜が、森保ジャパンでは途切れてしまっている。 久保は今年1月に「そんなに簡単に入るものではないと、みなさんも認識した方がいいと思います」と直接フリーキックの難しさを指摘していた。ただ、日本が7大会連続7度目のワールドカップ出場を決め、カタール大会の開幕が約5ヵ月後に近づいてきたいま、可能性を秘めた一人として精度を上げていきたいと今後をみすえた。 「試合のなかで誰にも邪魔されずに、自分のタイミングで蹴れるのはフリーキックだけなので。拮抗した試合でこちらのシュートチャンスがゼロだったとしても、一本スパッと決めて勝っても問題ない。その意味では突き詰めていきたいと思っています」 初ゴールを決めたといっても、カタール大会に臨む代表メンバー争いで当落選上にいる状況は変わらない。それでも、ゴールだけでなくアシストもない、という懐疑的な視線から解き放たれたいま、自身のテーマを久保はより明確に定めている。 「どちらかというと、自分が気にしているのはスピードですね。フィジカルに関しては、いま以上は必要としていない。もうちょっとスピードがほしいと思います」