似て非なるもの、新型ドグマFデビュー|PINARELLO
前方にオフセットしエアロになったBB
また、一目見て変わったと分かるのはダウンチューブ。BB部分に対しダウンチューブ下部が前方にオフセットする設計となり、「エアロキールボトムブラケット」と呼ばれるボリュームのあるBBエリアとなった。これは、アワーレコードにチャレンジしたボリデから受け継がれた技術なのだという。結果、バイク全体で0。2%の空力性能向上を達成した。まさにマージナルゲインだが、現代のロードバイクのブラッシュアップ作業とはこういうものなのだろう。
マージナルゲインを減らしたオンダフォーク
ピナレロのアイコンの一つであるオンダフォークも新設計。空力を向上させつつ、フォークオフセットを前作の43mmから47mmへと伸ばし、ハンドリングと安定性を高めた。フォークとフレームのエンド部分も改良された。スルーアクスルのシャフト穴のネジ山側がふさがれ、ルックスがすっきりしたうえ、空力性能向上にも貢献しているという。
より軽くなったシートクランプ
前作では上面が露出していたシートクランプだが、新型では完全内蔵。クリーンなルックスとなったうえ、汗や汚れの侵入を防ぐ。金属製のクランプパーツは小型化され軽くなった。なお、シートポストの挿入部分の断面形状は前作とほぼ同じようだが、新型シートポストは上半分がより薄くなっており、空気抵抗削減努力の痕跡が見て取れる。 このように、ほぼ同じに見えるフレーム形状だが、細部は細かく改良されており、エンジニアに言わせれば「似ているのはトップチューブくらいのもんさ」ということらしい。
イタリアンロードの心
ジオメトリ面ではピナレロ流儀が貫かれている。第1世代同様、新型ドグマFのフレームサイズは11種類。1サイズごとに高価な金型が必要になるカーボンフレームにもかかわらず、ここまで多くのフレームサイズを用意するのは他のメーカーには真似できない施策だ。ハンドルサイズのバリエーションの多さも含め、ここはいくら褒めても褒めすぎにはならない。フレームサイズを4~5種類でよしとするメーカーのみならず、「空力がよけりゃいいんだろ」とばかりにハンドル幅を360mmの1種類とするメーカーも出現するなか、この点においてやはりピナレロは素晴らしい。イタリアンロードバイクのハートはここにまだ生きている。 販売形態はフレームセットのみ。完成車が当たり前になっている今となっては珍しい手法だ。トップモデルらしく、フレームカラーは6種類と豊富。塗装はイタリアで行っているそうだが、どのカラーもさすがに丁寧な仕上がりだ。もちろんピナレロのカラーオーダーシステム「マイウェイ」にも対応しているため、“世界に一つだけのドグマF”を作ることも可能だ。 フレームセット価格は専用シートポスト込みで115万5000円。この価格に専用ハンドルは含まれておらず、別売(19万円3600円)となる。ロードバイク界きってのハイブランド・ピナレロの最新鋭トップモデルとはいえ、フルセットで130万円を超える。果たしてその価値はあるのか――。後日公開のファウスト・ピナレロ氏インタビューや新旧ドグマF比較試乗を通して、新型ドグマFとピナレロの今に迫る予定だ。
ドグマ F
価格:115万5000円(フレームセット、専用シートポスト込み)、19万円3600円(専用ハンドル タロン・ウルトラファスト)。 問:カワシマサイクルサプライ 。
Bicycle Club編集部