「手取りを増やす政策の一方で、手取りを減らす政策がしれっと通る?」“106万円の壁撤廃”に森永康平氏が懸念
厚労省がいわゆる“106万円の壁”を撤廃する方針を示した。 これは私たちの生活にどのような影響を与えるのか? 経済アナリストの森永康平氏に聞いた。 【映像】“106万円の壁”を撤廃で生活はどう変わる? “106万円の壁”とは年収106万円以上になると社会保険への加入義務が発生して手取りが減るため“働き控え”などが起こる問題のことだ。 厚労省の案では、年収要件に加えて従業員51人以上という企業規模要件も撤廃された。労働時間が週20時間以上という要件は残ることになる。 一方、106万円のラインを気にせずに働くようになり収入が増えても、手取りは減る懸念がある。 このショックを和らげるのが、保険料の負担割合の変更だ。原則は労働者と事業者で折半だが、厚労省は労働者の手取りの減り幅を抑えるため、事業者側の負担割合を重くすることを可能とする案を示している。 負担割合を変更できるのは年収156万円未満で、これは時限的な措置だという。 この保険料負担の折半について森永氏は「今回の特例によって例えば保険料の9割を企業が、労働者側は1割だけ負担し、将来もらえる厚生年金に関しては半々で払っていた場合と同じだけ労働者がもらえる形にもできる。これは一見、労働者に優しいルールだが、これは大企業優遇策にも見える。資本力のある会社が『うちは9割負担です』と福利厚生をアピールでき、中小零細の人手不足が加速してしまうのでは」と懸念を示した。 また、森永氏は当座の手取りが減る可能性について「将来のことなんて誰にもわからない。『年金で返ってきますよ』と言われても、まず自分がそこまで生きているかもわからないばかりか、今の年金制度を考えた時に『本当にもらえるの?』と不安になる国民もいる。『手取りを増やそう』と言った政党が議席を伸ばしたという国民の思いを考えれば、なぜ手取り増やす政策をしている一方で、手取りを減らすような政策がしれっと通っているのか? という問題もある」と述べた。 さらに森永氏は「壁が色々あってシンプルな制度からかけ離れていることは問題だ」と指摘した。 「会社員だと勝手に給与から天引きされてしまい、なかなか知識をつけづらいが、やはり税金・社会保険料の仕組みを勉強して、政治を監視しないといけない」 (『ABEMAヒルズ』より)
ABEMA TIMES編集部