静岡まるっと聖地づくり!『ゆるキャン△』と静岡県の挑戦を取材
昨今のキャンプブームの一翼を担う『ゆるキャン△』TVアニメの第三作目『ゆるキャン△ SEASON3』は大好評のもと放送を終了した。過去作では伊豆エリア、富士エリアや西部エリアを中心に活動したなでしこたちは、今回県中部の大井川流域へ舞台を移し定番の観光地から山奥の秘境まで余すことなく訪れた。 【関連画像】『ゆるキャン△』と静岡県の取り組みを写真で見る(写真4枚) メイン舞台のひとつでもある静岡県とアニメ『ゆるキャン△』はこれまでも数多くのコラボレーションを実施してきたが、今回は過去最大のボリュームを実現! 本記事では、そんな作品との蜜月な連携を地域側で主導する静岡県庁を取材。取り組みのいきさつや思い、『ゆるキャン△』と実現したい今後のヴィジョンについて話を伺った。 魅力的な作品作りの裏側で展開される、なかなか聞けない情報を知って、より一層作品を楽しく観てもらいたい! ――今年の4月から6月にかけて放送されたアニメ『ゆるキャン△ SEASON3』では、大井川流域を中心にストーリーが進みましたが、静岡県と作品の付き合い自体は第一作目の頃にさかのぼると思います。ここまで大規模な連携が続くことになるきっかけはどういったものだったのでしょうか。 県庁担当者: アニメ『ゆるキャン△』と静岡県の本格的な連携が始まったのは、『SEASON2』の制作が決定した2020年(令和2年)頃からです。 当時静岡県庁では、コロナ禍によって打撃を受けた観光産業の回復や富士山静岡空港の利用促進をどのように進めていこうか模索していました。 そういった状況下で、厚生労働省が提唱する「新しい生活様式」に則った観光の一つであるキャンプを題材とした『ゆるキャン△』に注目し、県内各地にあるモデル地を活かす連携の話が生まれました。 ――静岡に行くと各地で『ゆるキャン△』を用いたプロモーションを目にするので、静岡県にとって『ゆるキャン△』は単なるモデル地ではない、とても重要な作品ではないかと思っていました。まさに観光回復の起爆剤だったわけですね。 県庁担当者: その通りです。静岡県にとって『ゆるキャン△』は観光プロモーションの柱の一つと言えます。そもそも本県では、コロナ禍以前から観光面で課題を抱えていました。例えば、富士山、温泉やグルメをはじめとする豊富な資源に恵まれているがゆえに、プロモーションが総花的になってしまっていることや、他県と比較して来訪者が観光で消費する金額が低いことなどは長年の悩みでした。 そのような課題を解決する手段としても、アニメ『ゆるキャン△』は非常に魅力的でした。さまざまな地域の景勝地、グルメや温泉など多彩な観光資源をリアルなタッチで美しく描写しているので、作品の人気とあいまった唯一無二の情報発信が可能になりました。またモデル地が県の多くの地域にわたり、県全体の滞在時間の増加にもつながっています。 ――作品を観ることで静岡県内のモデル地を知り、訪れる。そして作中に描写されていた通りの風景に出会い感動するというのは聖地巡礼の魅力だと思います。この点で『ゆるキャン△』という作品は静岡県のプロモーションにおいて大きな貢献をしていると思うのですが、これまでの取り組みでどういった反響があったのか、具体的な事例をいくつか教えてください。 県庁担当者: 令和3年度にはじめて『ゆるキャン△』のモデル地を巡るデジタルスタンプラリーを実施しました。この事業による県内への経済波及効果は約4億1千万円と推計され、その年の観光消費額の増加に大きく寄与しました。また『SEASON2』のモデル地になったとあるお店の方から伺った話では、放送当時はコロナ禍だったこともあり一般的には非常に厳しい状況でしたが、モデル地になったことで多くのファンの方にお越しいただき、経営が傾くどころか利益はコロナ禍前よりもむしろ増加したそうです。いまでも県内のモデル地では多くのスポットで『ゆるキャン△』とコラボしたオリジナル商品を販売したり特設グッズコーナーが設けられていたりと、事業者の方が自発的に作品とのコラボに取り組んでいるのは特徴かもしれません。 私が実際に聞いた話はあくまでごく一部で、多くの事業者が『ゆるキャン△』による経済効果を実感していると思います。 ――4億円はすごいですね。実際にはこの事業以外にもさまざまなことに取り組んでいるので、推計以上の経済効果があったのではないかと思います。 県庁担当者: 今回の『SEASON3』で県中部地域(大井川流域)がモデル地として登場し、過去のシリーズとあわせて県内全域がモデル地となりました。今年度はそれを記念する県内全域を対象としたデジタルスタンプラリーを今年の10月からスタートし来年の2月末まで実施しています。開始から1か月の段階でおよそ5千名の参加者、4万個のスタンプが押されており、参加者の半数が県外から来ていることも分かりました。このことからも、県内への誘客と各地の周遊促進に大きな効果をもたらしていると考えられます。 ――各モデル地が個別に活動するだけでなく、県全体でまとまった情報発信しているのは『ゆるキャン△』をきっかけに静岡に興味を持った人にとってはとてもありがたいと思います。