静岡まるっと聖地づくり!『ゆるキャン△』と静岡県の挑戦を取材
『ゆるキャン△』で作るしずおかブランド
――ここまでのお話をうけて、改めて行政がコラボレーションを主導する意義が気になりました。特に『ゆるキャン△』の場合、先ほどの話にもあったように個人の事業者もコラボ商品を販売したりと積極的な印象ですが、そのなかで県庁として取り組む目的があれば教えてください。 県庁担当者: 行政がコンテンツ活用に取り組む大きな意義として、県外の方への観光資源のPRはもちろん、その先にある県民が地元の観光資源を再認識することによる地域のブランド化があると考えています。県民にとって身近な観光資源が作品に取り上げられ多くの人が訪れる光景を目にすることで「普段はあんまり認識していなかったけど、県外の方にとっては貴重な観光資源なんだ」と改めて地域の魅力を認識するきっかけになります。 また『ゆるキャン△』はキャンプが題材ということもあり、ファミリー層やお子さんでも楽しめる間口の広いコンテンツです。作品を観た子どもが身の回りにある観光資源を認識し、深く学んだり大切に思うようになり、将来的には周りの人に「自分の出身地にはこんな素敵な観光資源があって、『ゆるキャン△』にも登場しているんだよ」とご当地自慢をする。そしてそれを聞いた方が「じゃあ、静岡県にいってみよう」と考えるといった好循環が生まれ、地域の観光資源がブランドになるきっかけを作ることが県という大きな規模で取り組む意義だと考えています。 ――初めて会った人が自分の地元を知っていると嬉しいのはみな共通ですね!ブランド化だけでなくシビックプライドの醸成という点でも非常に意義のある取り組みだと思います。 ――これまで継続して『ゆるキャン△』と連携したプロモーションを実施してきて、来年には5年目を迎えると思います。今後の展開について決まっていることがあれば教えてください。 県庁担当者: 今年は春に『SEASON3』が放映され、一年を通じてファンの方々に楽しんでもらえる年でした。現在も先述のデジタルスタンプラリーだけでなく、パネル展や大井川鐵道と連携した音声企画を実施しており、今後もさまざまな企画を通じてファンの方やそれ以外の多くの方々に静岡県を訪れ楽しんでいただけるよう関係機関と連携していく予定です。 また、続編の『SEASON4』の制作も発表され、新たに『ゆるキャン△』のファンになったり、改めて第一作目から最新作までのモデル地を巡りたいというニーズが生まれたりしてくると思います。来年度は、今年度実施した企画の課題等を分析し改善することで、より一層観光客の方に楽しんでもらえる企画の実現に向け尽力していきます。 ――これからも続くのはファンとして嬉しい限りですね!継続のなかで話題が話題を呼び、新たに静岡県を訪れる人が増えていくのではないかと思います。 ――静岡県と『ゆるキャン△』のコラボレーションは、規模・実績どちらの面でもなかなか前例のない挑戦的な取り組みだと思います。こうしたコンテンツと地方の協働関係は今後も増加していくと思いますが、後に続く団体へのアドバイスも含めて、何か成功の秘訣などがあれば最後に教えてください。 県庁担当者: 最初に取り組んだ方がいいことは、作品や作品まつわる企画に対する地域側の理解を深め、協力体制を構築することだと思います。我々が取り組んでいるコンテンツツーリズムの場合、ファンの方々は作品の世界感を追体験したいと思いモデル地を訪問することがほとんどです。そうした状況で、当の地域側が作品を全く知らなかったり、協力する機運が醸成されていないとなると、ファンの方々とのギャップが生まれ大きな効果は生まれないと思います。 本県では関係市町・観光協会・商工団体・関係事業者などと協力関係を構築することを大切にしています。また、県民にとって身近な情報発信媒体である「県民だより」でも「『ゆるキャン△』×静岡県」の特集を複数回組むことで活動をPRするなど、県民全員の理解と協力を目指しています。協力関係や作品への理解は、一朝一夕にはできないので地道な努力と工夫が必要ですが、静岡県には『ゆるキャン△』を本当に愛している方々が多く意思疎通がスムーズにできているので、とても恵まれているとも感じています。 ――その通りですね。作品のファンが勝手にモデル地を巡ることを期待するのではなく、それをきっかけに作品には登場していないところも好きになってもらえるようにまちぐるみで取り組むのが今後のスタンダードになっていくと思います。 本日はどうもありがとうございました! 【アニメ『ゆるキャン△』シリーズとは】 浜松市出身の各務原(かがみはら)なでしこがソロキャンプをしていた志摩(しま)リンと出会い、彼女たちの通う高校の野外活動サークルメンバーとともにさまざまな場所でキャンプをし、友情をはぐくみ成長するアウトドア系ガールズストーリー。TVアニメシリーズはすでに3作放送され、先日第4作目の制作が発表された。
塚越 幸祐