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「昨年ほどの達成感はない」坂本花織の“発言の真意”とは…？「息が荒くなるくらい」極限の緊張も、全日本選手権“4連覇の快挙”の舞台ウラ

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坂本の“経験”が生きたある場面

　数々の経験を重ねてきた。それを無駄にせず糧としてきたところに坂本の真骨頂がある。 　経験ばかりではない。ジャンプをはじめ、それぞれに磨きをかけ続け、基礎的な技術の向上を図り、さらにはさまざまな種類の曲に取り組みつつ、表現の幅も広げてきた。一朝一夕では得られないそれらもまた、積み重ねて我が物としてきた。今日、一段高いところにいる理由がそこにある。 　それでも「悔しい」「守りに入った」と悔やむ。具体的には、予定していた3回転の連続ジャンプの2つ目を2回転に切り替えたところだ。 「(1つ目を)オーバーターンしてしまって、一瞬、(2つ目を)3(回転)にするか2(回転)にするか迷って。これでルッツ、ループに影響したら、失敗したら元も子もないな、と守りに入って。そこがちょっと」 　見方を変えれば、瞬時にそれだけ考えて即断できたのは坂本の経験だ。でも、それを「守りに入った」と反省材料にするのも坂本の姿勢を示している。

「昨年ほどの達成感はない」発言の真意は…？

　演技の前は緊張があったと言う。立ち位置的にも重圧がかかって不思議はないところにいる。 　それを乗り越えられたのは、「積」に象徴される経験とともに、大会の位置づけにあったかもしれない。 「(3連覇した)昨年ほどの達成感はあまりない感じがします」 　中野コーチから「4連覇できるのは花織だけだよ」と言われたときも、思ったのは、「『たしかに』。余裕というか淡々と、それくらいしか思わなかったです。4連覇を目指していたわけではなくて、優勝はしたい、でも4連覇に重きを置いていなかったので」 　その理由をこう語る。 「シーズンが始まる前から、今シーズン、来シーズンと2年を続けて考えていきたいということです。昨シーズンは、最高峰が世界選手権、そこで成績を残すためにも3連覇を目標としていました。でも最終はオリンピックで、あくまでも通過点です」 　来シーズンのミラノ・コルティナ五輪を目標に据えたとき、今シーズンはそこまでの前半になる。だから4連覇へのこだわりも大きくはなかったと言う。 　2シーズンを1つとしてとらえるから、今なお成長の過程である。

坂本花織のさらなる進化

「宿題が出たのは、次に向けていい調整ができそうな気がします」 　盤石とも言えるスケートを培った、あらゆる面で積み重ねる姿勢を持つ坂本らしかった。そしてさらなる進化を予期させもした。 　優勝により、世界選手権代表の座も手に入れた。オリンピックの国別出場枠のかかる大会でもある。最大は3枠。 「そこが決まれば自分もその3枠の中に入りたいという気持ちになって次のシーズンにいけるので、自分にとっても大切です」 　全日本選手権で出た課題の克服を志しつつ、日本のエースとして、自分のためにも出場枠「3」の確保を果たす。 (撮影=榎本麻美)

（「オリンピックへの道」松原孝臣 = 文）

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