《ブラジル》RS州大水害= 南援協、9割廃棄処分 復興に向け寄付募る
リオ・グランデ・ド・スール(RS)州の州都ポルト・アレグレ市に本部を置く日系福祉団体「南日伯援護協会」(谷口浩会長)は、大水害で壊滅的な被害を受けた施設や巡回診療バスの復旧・復興に向けて、寄付金を募る活動を始めた。谷口会長は「活動を再開するために多額の資金が必要。ご支援とご寄付をお願いしたい」と呼びかけている。 本部は同じく浸水被害に遭ったサウガード・フィーリョ空港の北側の地区に位置する。2階建ての本部施設のほか、高齢者教室や巡回診療、料理などが行える建物、倉庫、巡回診療バスなどが置かれているが、5月の大水害で約2・2メートルの水位まで水が襲った。1階に歴史資料や家具材、電化製品、巡回診療のための機材、約5000冊の書籍など、ほぼ全ての活動に必要な用具があった。 6月5日に水が引き、現在は清掃作業が進められている。約1カ月間水に浸かった内部の状況は悲惨で、会員情報などが記された紙資料や日本語書籍は「紙が粘土のようになってしまった」(協会役員)。建物内の下水の排水溝から直に下水が逆流したことも分かり、被害は拡大。木製の家具や電化製品、ドアなども軒並み使える状態ではなく、内部の9割以上の家具、家財を処分せざるを得なかったという。
加えて、1年に1度、奥地のコロニアに暮らす日系移住者の訪問診療を行う巡回診療バスも浸水。現在は業者が修理の見積もりを行っているが、車両本体は保険で賄うことができても、内部の診療機器や座席などは自費負担になるため、多額の資金が必要になる。バスは当面の使用が難しいため、今年は別の車両を借りるなどの方法で巡回診療を行えないかを模索。役員は「被害を受けたコロニアの方々が心配。本来は6月スタートの予定だったが、時期を調整して実施したい」と活動継続への想いを話す。 現在は建物の消毒作業に取り掛かり始めたが、15日ごろから降り続く雨が活動を妨げる。地区全体でも未だバスの運行は再開できず、ゴミ回収も「なかなか取りに来てくれず、道の前が見えないくらいゴミが多い」現状だ。 また、同協会は会員ら日系コミュニティの被災状況の把握にも努める。日系コロニアがあるイタチやイタプアでは畑が流されるといった被害を確認。ポルト・アレグレ近郊だけで少なくとも30家族以上が浸水被害などに遭った。マンションが浸水したことで近郊に避難している会員も多いが、エレベーターの故障や地下駐車場の水が引いていないなどの影響で帰宅できないという事例もある。