[懐かし名車] ニッサン シルビア/180SX:「走り屋御用達!」FRスポーツ兄弟誕生の裏事情
北米では「2ドアクーペ=ハッチバック」!?
国内では、日産サニー店、モーター店で売られるシルビアと、旧プリンス自動車系のプリンス店、チェリー店で売られる180SX(発売はシルビアの1年後)という売りわけがなされ、どちらかといえばシルビアが人気という印象でしたが、じつは北米市場では180SX(ただし、エンジンは一回り大きく車名も240SX)が主力でした。 そもそも北米市場では、2ドアクーペはハッチバックが定番です。アメリカを代表するスポーツクーペのフォードマスタングも、初代の登場当初はシルビアのようなノッチバッククーペでしたが、数年後にファストバックボディが登場すると人気を呼び、4代目以後はそちらが主役になりました。 1969年に登場した初代フェアレディZも、それに倣ってハッチゲート付きのファストバックボディとして北米で成功して以来、今日まで同タイプが続いています。 「ハッチバッククーペなら荷室でカップルがイチャつきやすいから」という俗説もありますが、ともかくアメリカ人はファストバッククーペを好み、180SXもそれに従ったのです。
“リトラクタブルヘッドランプ”誕生秘話
一方、180SXがリトラクタブルヘッドランプを採用していたのは、彼の地の法規の関係でした。日本ではグッドデザイン賞を受賞したシルビアのデザインですが、当時の北米の法規にはヘッドランプの高さに規制があり、シルビアの低いボンネット先端の位置では認可が取れなかったのです。 自由の国アメリカといいますが、自動車関連法規は意外と厳しく、ヘッドランプの形状も1939年から1958年までは、7インチ径の丸形2灯式シールドビームしか認められませんでした。 1958年に丸形4灯式が認可され、1974年に角型のSAE規格型2灯、4灯式が認められたものの、1983年に規制が撤廃されるまでは、それ以外の異形ヘッドランプでは、北米の道を走れなかったのです。 日本や欧州では異形ヘッドランプもOKでしたが、フェラーリなどのスーパーカーのおもな市場は昔も今も北米です。そこで、規格モノの電球を使いながらかっこよくて空力性能に優れたヘッドランプを目指して、リトラクタブルヘッドランプは生まれたのでした。