藤波朱理、137連勝&パリ五輪金メダルへ 「肘のケガは自分に必要なものを教えてくれるメッセージだった」
日本時間の深夜、レスリング女子53kg級フリースタイル決勝に藤波朱理(ふじなみ・あかり/20)選手が登場する。霊長類最強女子の吉田沙保里選手の連勝記録を超え、137連勝がかかった大一番。五輪での金メダルは藤波選手が目指してきたもの。3月に左肘を脱臼&靱帯断裂の重傷を負って手術を受けたが、その影響を感じさせない圧倒的な強さで決勝まで上り詰めた。ここではそのケガについて語ってくれた、パリ五輪直前のインタビューをお届けする。 [女性のためのトレーニング雑誌『Woman's SHAPE & Sports vol.28』より一部抜粋] ──藤波選手のフィジカルを担当する永友憲治トレーナーに聞いたところ、「ちょっと前まで高校生だったとは信じられない」とレスリングに対する真摯な姿勢を高く評価していました。 「(ニコニコしながら)本当ですか! うれしいです」 ──中でも評価していたのは自己管理能力の高さだと言っていました。自分でもそう思いますか? 「いやぁ、そこはどうですかね。自分では(むしろ)課題点だと思っています。試合前とかになると、ガーッと(必要以上に)追い込んでしまうところがある。(今年は)ヒジをケガしてしまったということもあるので、そこは課題として残っているんじゃないかと思いますね」 ──集中して全力で追い込むがゆえに、ときには100%を超えてしまうこともあるということですね。 「100%を超えると、ケガをしたり、体調不良を引き起こしたりするんだと思います。でも経験や失敗をしながら学べてもいる。自分は追い込むことは得意だけど、そうするだけではなく、そこでいかに上手にブレーキをかけるか。それはひとりではできないこともあるので、永友トレーナーやコーチに『今日はちょっとやりすぎじゃない?』と声をかけてもらうようにしています」 ──昔からそうでしたか? 「ハイ、でも以前はそういうふうに追い込むだけでも順調にこれていたけど、大学に入ってからリスフラン(じん帯損傷)やヒジなどケガが増えてきたので、もう一度見直さないといけないというのはあります」 ──ケガをしたときに焦りがなかったら嘘になると思います。しかし、そこでもう一度自分を見つめ直すことで、ケガをしたことも最終的にはプラスにしたいと。 「そう思います。あの時期にヒジをケガしていなかったら、オリンピック直前になって、もっと大きなケガをしていたり、取り返しのつかないことになっていたかもしれないので。このヒジのケガは自分に必要なものを教えてくれるメッセージだったかも。このケガをムダにしないように、パリまでは単に追い込むだけではなく、しっかりとピーキングを考えてやっていきたい」 ──パリまでのキーワードはピーキングになりますか? 「そうですね。身体の声を無視しない、というか。追い込むことで不安を消すのではなく、それ以外にできることもあると思う」 ──いまこうやって取材を受けている藤波朱理とは別に、ちゃんと自分の体や心のことを考えている、もうひとりの藤波朱理がいるわけですね。 「(悟ったような表情を浮かべながら)あ~っ、そうですね。本当にそうですね。もうひとりの自分がいるような感覚でいます」 ──もうひとりの自分は厳しい? 「フフッ、厳しいというか、客観的に自分を見られるという感じですね。自己中心的ではなく、もっと自分を客観的に見ることができる存在です。心身共にベストにもっていけるように用意していきたい」