「テレビ局」と「Netflix」アメリカではどちらがより多くテレビで視聴されている?
VODから「FAST」に移行しつつあるアメリカの動画市場
アメリカでのストリーミングの人気の高さはすでに述べた通りですが、あえて厳しい見方をすると「地上波の人気が日本ほど高く無いアメリカでさえ、ストリーミングがテレビ局を逆転するにはいたっていない」という考え方もできます。意外に「テレビ局をストリーミングが逆転するには、あと一歩が足りない」のかもしれません。 こうした点を議論する際に注目されているKWが「FAST」です。たとえば、Netflixは「VOD」に位置付けられるサービス。無数の映画やドラマ、バラエティなどのコンテンツの中から自分好みのものを能動的に選ぶことが求められる点が「良い点」でもあり「悪い点」でもあります。テレビほど気軽にながら見できないのが、視聴者を遠ざけている側面もあります。 一方、従来のVODサービスから、新たに消費者が選び始めているのが、「FAST」(Free Ad-Supported Streaming Television)と呼ばれるサービス。FASTは、無料で視聴できる代わりに広告が挿入される仕組みで、従来のテレビ放送のように、リアルタイムで番組が流れる仕組みとなっています。FASTはテレビのような「ながら見」に適している一方、広告収入で成り立っているため視聴者に費用負担がなく、さまざまなチャンネルを楽しめます。 ■「FAST」の中心的な役割を担うRoku
FASTサービスの中で、特に注目を集めているのが「Roku」です。RokuはもともとはNetflixを主な用途とするストリーミングデバイスのメーカーでしたが、2024年現在では独自のFASTサービスも展開しています。2014年にRoku TVを開発した同社は、Netflixとはすでに決別。いまではアメリカで約400近くの膨大なチャンネルを提供しています。 VODが課題として抱える『「選ぶ」工数が大きく、だらだらと視聴するのに向かない』、『VODサービスに広告プランを導入すると視聴者からの反感を買うリスクが大きい』といった点を解消し得る一つのビジネスモデルとして「FAST」には熱い視線が注がれており、テレビ視聴時間を対象とした新たな広告サービスとして一大市場に発展する可能性を秘めています。