【西武投手王国への道】身体の理解度を深め質の高い球を投げる 今季最も成長の跡を示した渡邉勇太朗
調子の波があるなかで見せる高い対応力
トレーニングやコンディショニングで体の状態を上げ、マウンドで質の高い球を投じる。そのために見直したのが投球フォームだ。去年までは左足を上げて軸足に力をためて投げていたが、今季は左足を少しだけ上げて投げるように変えた。 「僕の場合、左足を上げると若干リズムがおかしくなったり、足を上げてから体重移動していくタイミングが若干ずれたりします。目線のブレも大きいので。それをやめて、クイックにしちゃおうと。足を上げずに投げて球速も変わらず出ているので問題ないかなと」 西武でクイック投法と言えば、思い浮かぶのが平良だ。 「平良さんの影響ではないですけど相談しました。平良さんの場合、クイックのほうが並進運動が速くなるからしているみたいですけど、僕は並進を速くするというより安定性を求めています」 身体と投球フォームを見直した今季、初登板は開幕から約1カ月半後の5月18日と出遅れたが、以降安定した投球を続けた。長いシーズンでは当然調子の波があるなか、渡邉の成長を感じるのが対応力だ。 例えば7月16日のオリックス戦(ベルーナ)では5回二死一塁、一番・大里昂生に初球のストレートが外角高めに抜けると、プレートを外しセカンド方向を向きながら間を置いた。 「感覚的に若干おかしかったので。悪いイメージを払拭するために1回外しました。自分のルーティンワークと一緒なのかなと思います」 一息入れると、速球を高めに3球続けて見逃し三振に仕留めた。 8月22日のオリックス戦(ベルーナ)では勝敗がつかなかったが、7回途中1失点。前回まで出力が十分ではない試合が続いたなか、ウエート・トレーニングをしないで登板すると体の調子が良くなったという。 この試合ではストレートの使い方が巧みだった。最速150キロから140キロ台前半と幅があったのは、力の入れ方を調整したからだ。 「力を入れるところはしっかり入れる。コースを意識すると球速が落ちるけど、ラインを意識しました」 9月6日のソフトバンク戦は前回登板で打球を受けた影響もあったが、5回無失点で今季3勝目を飾った。 「いいコンディションではありませんでしたが、そういう日だと割り切って先に点を与えないように丁寧な投球を心掛けました。カウントを悪くする場面も多くありましたが、要所でギアの上げ下げがうまくできて打ち取ることができたのは本当に良かったです」 今季は打線の援護率1.78と恵まれないなか、安定した投球を続けたのは大きな成長の証しだ。大器と期待されてきた右腕は、来季のさらなる飛躍へ充実のシーズンを過ごした。
週刊ベースボール