昨年度の小中不登校34万人、11年連続最多更新 保護者意識「行かなくてもいい」に変化も
文部科学省が全国の小中高校などを対象に実施した令和5年度の問題行動・不登校調査の結果が31日公表され、小・中学校の不登校児童生徒数は前年度比15・9%増の34万6482人と、11年連続で過去最多となったことが分かった。ストレスを抱えてまで学校に行く必要がないとする保護者の意識変化やコロナ禍で生活リズムが崩れ、登校意欲が低下したことなどが増加要因とみられる。 不登校児童生徒数の増加率はわずかに鈍化し前年度より6・2ポイント低い15・9%だった。5年度に新たに不登校になった中学生の生徒数が前年度より291人減の9万853人と8年ぶりに減少したことが寄与した。 学校に在籍する児童生徒に占める不登校児童生徒の割合は3・7%(前年度3・2%)。複数回答による個別事情では「学校生活に対してやる気が出ない等の相談があった」が32・2%で最も多く、「不安・抑うつの相談があった」(23・1%)が続いた。 また、小中高校のいじめの認知件数も73万2568件で同比7・4%増でコロナ禍で減少後、3年連続で過去最多となった。交流サイト(SNS)などでのいじめに注意が高まったことなどが背景の一つとみられる。被害者の心身・財産に重大な被害が生じた場合や被害者が長期欠席している状況の「重大事態」は同比387件増の1306件で過去最多だった。 ■低学年が急増 学年別では、小学1年生は2年前から2倍超の9154人となるなど低学年の増加幅が大きい。専門家からは、共働き世帯が増えて学校の滞在時間が長くなった低学年の負担軽減やメンタルケアの拡充を求める声が上がる。 不登校の児童生徒数は全学年で前年度から増加しているが、特に低学年の増加率が高い。小学1年生が令和3年度の4534人から倍増したほか、小学2年生も同比1・88倍の1万3694人と高学年に比べて増加率が高かった。 小中別で比べても、小学生は前年度比24%増の13万370人で、中学生は同比11%増の21万6112人と小学生の増加率の方が高く、低学年への対策が急がれる。 文部科学省はこうした状況を受け、小学校に上がったばかりの子供がうまく順応できない「小1プロブレム(小1問題)」の解消に力を入れている。令和4年度からは、幼児教育期から小学校へと子供を円滑に橋渡しする「架け橋プログラム」を推進。同省は「接続期の順応の難しさもあり、教育環境の改善は必要だ」とする。
上智大の酒井朗教授(教育社会学)は「学童保育を利用する低学年の児童は増えており、タイトな生活全体を考慮した取り組みが必要だ。心身の安定も保障していくべきだ」としている。(楠城泰介)