【安達祐実さんインタビュー】映画『三日月とネコ』が大人に刺さる!「この3人の、傷を舐め合うような関係も何かいいな」
傷を舐め合えるって、なんかいい
灯自身も恋愛になかなか踏み出せなかったりしますが、仁くんの恋愛も私的には、“え、そっち⁉”みたいな驚きの展開もありました。 「仁くんの恋愛も、とても興味深いですよね。また映画ではあまり描かれていませんが、原作では鹿乃子にも“なるほどな~”という恋愛が繰り広げられるんですよ。みんなそれぞれ恋の悩みがあり、みんな自分の恋愛には臆病になってしまう。鹿乃子さんも完璧に見えて、すべてが上手くいってるわけじゃなくて。でも、その傷を舐め合えるというのも、3人の優しさだったり、思いやりだったりするのかな、と。自分も“寂しさ”みたいなものがあるからこそ、相手の寂しさが理解できて、だからこそ不思議とそれが埋まっていく。そんな関係性もなんかいいな、と感じながら撮影していました」
確かに“傷の舐め合い”って否定的に捉えられがちですが、お互いの痛みを分かり合えるからこそ舐め合えるってことですよね。すごく優しい。 「傷が消えるように治すという能動的な方向じゃないかもしれないけれど、相手の傷を認め合えるって、すごく大切なことだと思いました」 映画を観ながら、“それ、言ってくれてありがとう!”と溜飲が下がったり、誰かの言葉のお陰でスッキリ出来るようなセリフも多々ありました。 「原作コミックを読んだ時も感じましたが、映画では小林聡美さんが演じられている作家の網田先生が、“責任というものは、 自分が楽に楽しく生きるためだけに課すものだ”とおっしゃるんです。撮影時も本当に救われるセリフだなと思いながら聞いていましたし、原作を読んでいた時もそう思いながら読んでいました」 「みんな色んなことを背負い込み過ぎているというか、ちゃんと責任感を持って色んなことに向き合おうとしていますよね。でも究極的には、自分が幸せに生きるためだけに責任を課せばいい。そう言ってもらえて、私もすごくホッとしました。自分のことをダメだと責めたこともあるけれど、そうでもないのかなって思えたり、これでいいのかなって思えたり。自分の生き方を含めた色んなことを許してあげられるセリフだと、今もすごく感じています」 灯自身も書店員であり、とても言葉に対して敏感です。俳優という仕事も言葉に対して敏感だと思いますが、言葉に対する感覚などについて、灯を通して感じたことはありますか。 「本作は、とってもセリフ数が多く、色んな言葉があるのですが、その全部がとても大事なことを言ってる感覚がありました。灯って、とても自分に正直に、気持ちに一番近い言葉や最も適切な言葉をいつも選ぼうとしているんです。そういうところが自分に重なるなと思いました。灯は今の生活や今の自分など、全部をひっくるめて“自分”だと思っているから、恋愛の相手となる長浜さんにも、“そういうものを全部含めて自分のことを愛してくれないか”と言う。それって本当はみんなが望んでると思いますが、なかなか言えないことだと思って。灯がそれを代弁してくれたと感じていました」