スズキ「カルタス」2代目が超お買い得価格な69.6万円~でデビュー、GTiはスイフポの先祖【今日は何の日?9月14日】
一年365日。毎日が何かの記念日である。本日は、スズキ初の小型乗用車「カルタス」の2代目が誕生した日だ。カルタスは、当時提携関係にあったGMと共同開発した世界戦略車。初代はGM主導で2代目はスズキ主導で開発され、初代よりも上質化が図られた。 TEXT:竹村 純(Jun TAKEMURA)/PHOTO:三栄・名車アーカイブ スズキのすべて ■2代目カルタスは日本市場を重視しスズキ主導で開発 スズキ・カルタスの詳しい記事を見る 1988(昭和63)年9月14日、スズキとGMの共同開発で誕生した世界戦略車「カルタス」の2代目がデビュー。スズキは1981年にGMと資本提携し、共同開発で誕生した初代カルタスはGM主導で日本では不評だった。2代目は巻き返しを狙い、日本市場を重視してスズキ主導で開発された。 ●GM主導で共同開発した初代カルタス スズキは、1981年にGMと資本提携。カルタスは、GMとの共同開発された小型乗用車の世界戦略車として1983年にデビューした。スズキにとっては、少量生産だった「フロンテ800」を除き、実質初めての小型乗用車だった。 スズキとGMの提携は、1970年代に起こったオイルショックと排ガス規制強化の影響で、燃費の良いコンパクトカーの必要性に迫られていたGMと、世界進出とりわけ米国進出を狙っていたスズキの思惑が一致したことによって締結に至ったのだ。 初代カルタスは、GMの意見が色濃く反映され、廉価で燃費の良い小型車が目標とされた。オーソドックスな3ドア/5ドアハッチバックに、1.0L直3エンジンが搭載されたカルタス(米国名:シボレー・スプリント)は、米国では好調な販売を記録した。 一方で、日本ではコストダウン至上主義に執着するあまり、安っぽいイメージが先行して苦戦した。しかしその後、品質向上に取り組み、1986年のマイナーチェンジで登場した97ps(翌年110ps)の高性能1.3L直3 DOHCエンジンを搭載した「カルタスGT-i」は、モータースポーツで大活躍し存在感をアピールした。 ●スズキ主導で共同開発した2代目 日本で不評だった初代の反省を踏まえて、日本市場を優先してスズキ主導で開発したのが、1988年のこの日に登場した2代目カルタスだ。 プラットフォームを一新し、上級志向に舵を切ったのが特徴である。ワイド&ローのウェッジの効いたフォルムで、初代と同じ3ドア/5ドアハッチバックの2タイプを用意。またインテリアについても、居住空間を確保した上でシートの上質化とサイズアップが図られた。 パワートレインは、新開発の最高出力58psの1.0L直3 SOHCに加え、73psの1.3L直4 SOHC&115ps DOHCの3機種エンジンと、5速MTおよび3速ATの組み合わせで、標準グレードは安価な69.6万円で販売された。ちなみに当時の大卒の初任給は、15.8万円(現在は約23万円)程度だったので、単純計算では現在の価値で標準グレードが101万円に相当する。 その後、3代目となる上級グレードの「カルタスクレセント」を投入し、安価なカルタスと上級小型車カルタスクレセントに棲み分けられ、結局2000年まで生産が続けられた。カルタスは、当時まだ実績のないスズキの小型車ということもあり、認知度は低く販売は伸び悩んだ。 ●カルタスの後継として誕生したスイフト 2000年にカルタスの後継車として国内に投入されたのが、初代「スイフト」である。初代スイフトは、軽のプラットフォームを流用し、ホイールベースは軽自動車と同じでトレッドを広げたボディに、排気量1.3Lのエンジンを搭載した5ドアハッチバック。軽ベースで、さらに軽の部品を流用して低価格を実現したため、初代は軽自動車のイメージから脱却できず、現在のスイフトのような人気を得ることはできなかった。 専用部品に設計し直して軽のイメージを一掃したのは、2004年に登場した2代目スイフトだ。国内外で人気を獲得し、世界中でスイフトの名前が知れ渡った2代目こそ、スズキの実質的な世界戦略車第1号と位置付けられている。 以降、スイフトはモデルチェンジしながら進化を続け、今や日本を代表するコンパクトカーに成長し、絶大な人気を誇っているのだ。 ・・・・・・・ カルタスは地味な存在だったが、スズキの小型車、世界戦略車の道を切り拓き、さらに現在のスズキの看板モデルとなっているスイフトの源流となったことを考えると、スズキにとっては重要な役目を果たしたと言える。 毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。
竹村 純