狭まるフランスの選択肢、極右内閣か議会こう着か-視界不良の時代へ
中道左派の穏健派など政治的な人物を首相に選んでも、急場しのぎの中道連合の分裂や内閣不信任のリスクになおさらされやすい。
マクロン氏は自らの企業寄りの改革を進めにくくなる。近く退陣する政府はすでに6月30日遅く、失業手当の改革実施を阻止し、マクロン氏がレームダック化しつつある兆しを示した。
フランスの財政赤字は国内総生産(GDP)比5.5%と欧州連合(EU)基準の3%を優に上回り、選挙前から財政政策は投資家に懸念されていた。予算案は常に内閣不信任投票を引き起こしがちな火種で、マクロン氏の現内閣が計画し、左派がこぞって反対する歳出削減は阻まれそうだ。
2.苦い「コアビタシオン」
RNとその協力政党が十分な大勝を収め過半数を確保する場合には、いわゆる「コアビタシオン(共存政権)」となる。大統領が国防と外交政策を担うが、内政や経済問題は極右が支配する。こうした形は以前にも起きたが、前回は20年以上も前で、政治的な立場がこれほど違う政敵同士の組み合わせは過去に例がない。
マクロン氏は2027年までの任期を全うする考えを示しているが、RN党員らはコアビタビシオンになるならマクロン氏は辞任すべきだと主張している。大統領は議会を解散させることもできるが、前回解散から1年は間を置かなければならない。
過半数確保なら政府はより安定するが、政策見通しはいっそう予測が難しくなる。
バルデラ氏は保守寄りの有権者を安心させようと、ルペン氏が2022年の選挙期間中に打ち上げた大規模な支出の公約を縮小した。それでもRNは依然として公約の柱に掲げる燃料・エネルギーの売上税減税の実現に取り組まなければならない。同党の試算によると、この政策は通年で120億ユーロ(約2兆800億円)のコストが見込まれるが、資金の手当ては難しいだろう。
予算協議は市場の大きな注目を集める見通し。RNは現内閣が描く財政軌道を堅持すると約束しているが、選挙公約をほごにすることなしに必要な歳出削減と増税を行うのは困難だ。ルペン氏は過去に反EUの姿勢を打ち出していたこともあり、EUとの関係もぎくしゃくしそうだ。