ソバに復権の兆し 輸入高騰で国産に注目
国内の栽培、20年で1・5倍
ソバの作付面積が増えている。2023年産は6万6700ヘクタールと、20年前の1・5倍、30年前の3倍に拡大。かつて生産が盛んだった1950年並みの水準だ。水田転作の省力作物として生産面で重宝され、実需でも高騰する輸入ソバに代わり国産を重視する動きがある。 製粉業者などへのソバの年間供給量はおおむね12万トン前後(玄ソバ換算)。うち約4万トンが国産で、残りは輸入が占める。ソバは湿害に弱く、国産はその年の作柄で値段が変動しやすい。製粉業者でつくる全国蕎麦(そば)製粉協同組合は「堅調な需要はあるが、輸入に頼らざるを得ないのが現状だ」と話す。 一方で輸入物は、価格上昇が目立つ。専門商社の中央貿易(東京都中央区)によると、輸入元の7割を占める中国では、トウモロコシや搾油用ヒマワリなど他品目への転換が進み生産が減少。物価高も重なり、輸入物の卸値は上がっている。貿易統計によると、波はあるが単価はここ10年で1・5~2倍ほどに上昇。同社担当者は「近年は国産の方が使いやすい年もあった。もともと国産は味や香りに優れ、街のそば店需要はあったが、大手でも国産化の動きがある」という。輸入の1割強を占める北米産も、生産減などで価格が上昇している。 国産ソバの利用に力を入れる実需者も出ている。ローソン(東京都品川区)は22年10月から調理麺に国産玄ソバを使う。24年10月には石うすひきの物に変更、「ソバの風味をより感じられる」(担当者)という。「野菜かき揚げそば」「3種きのこそば」の2品を展開する。製麺大手のシマダヤ(東京都渋谷区)は、「国産そば粉使用」をうたった家庭用チルド商品の「流水麺」「健美麺」などを販売する。同社は「国産を支持する消費者は多く、訴求効果につながっている」と話す。 生産は東北、関東の米産地を中心に伸びている。秋田県は4440ヘクタール(23年産)で5年で1・2倍に増加。転作品目の中でも「中間管理が不要で、農地の維持がしやすい」(園芸振興課)とする。栃木県は3450ヘクタールで同1・3倍。「県内外で需要は高く、拡大している」(生産振興課)という。今年8ヘクタールでソバを導入した、埼玉県のある担い手農家は「引き合いは強い。収穫が11月のため水稲と競合せず、乾燥機の稼働率も高められる」と評価する。 ただ、国の転作助成・水田活用の直接支払交付金は5年に1度の水張りが条件となり、代わりの畑地化助成も交付は5年限り。「今後は転作ソバは増やしにくい」(業界関係者)との声もある。 (古田島知則)
日本農業新聞