突然やってくる身近な人の“死”、葬儀に相続・お墓問題まで…膨大な手続きはどうするべきか
亡き夫の置き土産
「最近になって、またひとつ相続があったの。ゆうちょの十年定期預金が満期になりましたって連絡があって」 それは三年前のこと。お義母様はすでに亡くなっていた。すると、この預金は二分の一をNさん、四分の一ずつをお義姉様二人と分割相続することになる。しかし、二人は辞退したという。
自分の終活
一人暮らしのNさんは、いつ何があってもいいように、合鍵を妹さんと、長年の犬友であるお隣さんに渡してあるという。そして、 「延命措置は拒否、葬式はなし。遺骨は夫と同じ場所に散骨してほしいという要望書を書いて、冷蔵庫に貼ってあるの」 夫君の遺骨は、ヨット仲間によって海に撒かれた。 「散骨サービスをする業者に頼めば、ちゃんと遺骨粉砕して、海に溶ける紙で梱包してくれるの。ヨット仲間は十人だから十個作ってもらって。それにお花を添えて、みんなで散骨したの」 その同じ場所に、自分のお骨と、歴代の犬たちの遺骨も撒いてもらう約束をしているのだという。 マンションと財産は姪っ子さんに残すことを、遺言書に書いた。 「遺言書は手書きじゃなきゃダメだから、いまの私たちには大変よ。パソコン慣れしてるから、字がちゃんと書けないじゃない? 行書のような崩し字はダメ、楷書でしっかり、誰が読んでも読めるように書かなきゃいけないから」 あ、それ一番苦手、と私は思った。六十歳のいまでも、自分で書いたメモが読めない(笑)。終活用に、ペン字でも習おうか。
文:横森理香