キューバの公務員、月収2000~3000円はホント?
◆医療・教育費が無料というのはホント?
どちらも無料です。医療は数10戸ごとに配置された「かかりつけ医」が、予防と初期の診察を担当します。重病患者は「かかりつけ医」が紹介した「上」の病院で治療を受けられます。そこでも難しければ、さらに「上」の医療機関が紹介されるという仕組みです。ただし、どの施設も老朽化が激しく、医療機器や薬品も欠乏しているようです。あらゆるモノ不足が伝えられますが、現地の日本人は「一番足りないのは医薬品」と嘆き顔でした。風邪薬や鎮痛剤はともかく、特殊な病気の治療薬やワクチンの入手は困難なようです。 マイケル・ムーア監督の映画『シッコ』はキューバの医療制度を賛美していましたが、カメラはすべてを映し出したわけではありません。教育も同様です。学費は初等教育から大学まですべて無料ですが、ハイレベルの教育機関に入るには、家庭教師を雇ったり教師に便宜をはかってもらったりと、それなりのものを用意しなければならないようです。医療や教育も「二層構造」になっているのです。 「表と裏」「理想と現実」は、どの社会にも見られます。ただキューバの「二層構造」は、下層部(正業の薄給)を近年注目されているベーシックインカムの一種と考えれば、周回遅れで先を走っているような錯覚に陥ってしまうのです。少なくとも基本的な医療・教育費は無料だし、老後の不安も聞こえません。あちこちで「物乞い」にあいましたが、現地の人に聞くと「外国人を見れば反射的におねだりする副業のようなもの」とのことで、実際ホームレスの姿は目にしませんでした。 ただ、平等の理念が支えてきた下層部が大きく揺らぐいま、多くの国民はこうした「二層構造」に疑問を感じています。しかし、どこに問題があるのかと問うと、少しトーンが下がります。一党独裁の体制下、国民が経済政策を選択することはできません。直接的な政策・政権批判はどうしても避けようとします。 (フリー編集者・大迫秀樹)