2025年のクラウド戦略を総点検せよ--ガートナーの提言から考察
2025年に採るべきクラウド戦略とは 図2は、2025年に回避すべき「クラウドを適切に推進しないリスク」として、「スピードが遅い」「コストが高い」「不満足」といった点を挙げたものである。 これに対し、図3は2025年に採るべき「クラウド戦略」として、図2の項目ごとに対応した形で「早い」「安い」「より満足」といった点を挙げたものである。 以下、項目の中から幾つかを取り上げて筆者なりの考察を述べておきたい。順番が飛ぶ形になるが、ご容赦いただきたい。 まず、3番目のリスクに挙げられている「トラディショナルベンダー、システムインテグレーターに10倍のコストを支払う」というのは、つまりは従来のオンプレミスシステムの構築と同様の契約や仕事の進め方になってしまっているからだ。このリスクを回避するのは、まさしくユーザー企業の判断だ。だからこそ図3にあるように、「クラウドの実行能力を有したエンジニアとの付き合いを深め、大幅なコスト削減を狙う」必要があるのだ。 5番目のリスクにある「セキュリティが不安定な、かつ止まるかもしれないシステムになる」というのは、クラウドサービスへの懸念を表したものだが、これは図3にあるように「スキルを身に付け、セキュリティとシステムの稼働率を担保する」ことこそが対策だ。亦賀氏はかねて「クラウドは自分で運転せよ」と訴えているが、要は「クラウドサービスを使いこなしたいならば自分で使い込むことが大事。そうすればリスク対策も自分で講じることができるようになる」という理屈だ。 7番目のリスクにある「優秀なエンジニアが採用できない。また入ってもやめてしまう」というのは、人材不足が深刻化する中で、どこの企業も切実な悩みを抱えているようだ。これに対し、図3では「優秀なエンジニアが活躍できる場を設ける」と述べている。この点については、筆者が最近の経営者への取材の中で聞いた一言を紹介しておきたい。それは、「これからは企業が人を選ぶのではなく、人が企業を選ぶようになる」というものだ。要は、企業そのものを魅力的な存在にしないと、エンジニアをはじめ優秀な人材など来ない。これはまさしく経営問題である。 最後に、8番目のリスクに挙げられている「クラウドを知らない上司への説明に時間がかかり過ぎ生産性が向上しない」というのは、筆者も取材の中でまだまだ現実問題としてよく聞く話だ。これに対し、図3では「マネジメントも認定資格を取得し、スピーディーに実行できるようにする」とあるが、たとえ資格を取得できなくとも、少なくともクラウドが社会や企業にもたらすインパクトを理解し、デジタルトランスフォーメーション(DX)を進めようとする若い人たちの「邪魔」をしないことが求められる。厄介なのは、そういう上司は自分が邪魔をしているという認識さえないところなのだが…。 ということで、2025年に採るべきクラウド戦略として挙げられているGartnerの提言について、2025年まで2カ月足らずとなった今からあなたの会社でもチェックし、しっかりとしたクラウド戦略を打ち立てて実践していただきたい。