「在宅医療」テーマに市民公開講座オンライン開催―日本呼吸器学会学術講演会、4月5日開幕
◇増える患者、医師不足―山積する課題の解決策模索
呼吸器疾患患者は増加傾向にありますが、呼吸器内科医の不足は深刻で、学会にとっての最大の課題となっています。 WHOによると、世界の死亡原因のトップ10にCOPD(慢性閉塞性肺疾患)、肺炎、肺がんと呼吸器疾患3つがランク入りしています(2019年)。国内でも高齢化に伴い、これら3つの患者が増えています。COVID-19のパンデミックで明らかになったように、呼吸器の疾患は生死に直結しているのです。 COPDは世界では死因の3位ですが、日本ではトップ10に入っていません。これは患者さんが少ないのではなく、COPDの診断を受けていない患者さんが非常に多いために、老衰や肺炎に分類されていると思われます。2001年に行われた疫学調査(NICEスタディ2001)では、COPDの患者数は500万人以上と推定されており、現在では600万人以上の患者がいると考えられます。ところが、診断されているのは20数万人ほどしかいないのです。 また、肺炎は2017年に「誤嚥性(ごえんせい)肺炎」を区別して分類することになったため、現在死因の5位ですが、両方を合わせると実は4位(老衰を除くと3位)になります。肺がんやCOPDなども合わせると、呼吸器疾患は今後数十年にわたり入院患者数が増えるもっとも重要な疾患と考えられています。 こうした状況にもかかわらず、消化器、循環器と並んで“3大内科”の一角を占める呼吸器内科は、専門医が消化器内科の約3分の1、循環器内科の約半数しかいません。 私たちが行ったアンケートでは「呼吸器内科は忙しいけれども楽しく働いている」という傾向がみられました。そうした実態を医学生や研修医に知ってもらい、医師数を増やし、忙しすぎず、楽しく仕事ができる環境をつくっていきたいとさまざまな活動をしています。 ほかにも呼吸器内科領域には地域偏在、大学院進学や海外留学を志向する若手の減少、病理医の不足など、解決すべき課題が山積しています。こうした課題は、いずれも学会が中心となって取り組んでいかなければならないものと考えています。