韓国政界襲う「尹大統領夫人候補公認介入説」…与党議員の公認漏れ前後に何が?
キム・ゴンヒ女史が国民の力の候補公認に介入していた、との主張が政界に波紋を広げている。第22代総選挙を約1カ月後に控えた今年2月末に、国民の力のキム・ヨンソン議員(当時)が自身の公認についてキム女史と何者かがやり取りしたチャットのスクリーンショットを改革新党の指導部に示しつつ、比例代表名簿の上位に自身を入れるよう打診していたことが、19日の報道と関係者の証言で確認されたのだ。野党は「捜査を通じて究明すべき事案」だとし、「キム・ゴンヒ特検」の受け入れを迫っている。 ハンギョレの19日の取材を総合すると、キム前議員は自身の選挙顧問のミョン・テギュン氏と共に今年2月29日、慶尚南道河東(ハドン)の七仏寺(チルブルサ)で改革新党のイ・ジュンソク、チョン・ハラム両議員らと会った。この席でキム前議員は、キム女史が登場するテレグラムのスクリーンショット写真を見せながら、改革新党の比例代表候補として公認してもらえるかどうかを打診したという。イ議員はハンギョレに、「キム前議員が『悔しくて言いたいことがある』と言うので明け方に七仏寺に行ったところ、キム前議員が(テレグラムでの会話の)スクリーンショットを見せてくれた。1時間ほど話をしてから帰ってきた」と語った。 この時の対面についてニューストマトはこの日、「比例代表での公認を前提としたキム前議員の国民の力からの離党と改革新党への入党、キム・ゴンヒ女史の候補公認介入の暴露が議論されたことが確認された」と報道した。このような報道内容はハンギョレの取材結果ともおおむね一致する。状況をよく知る改革新党の関係者は、対面時にキム前議員に見せられた会話について「キム女史による『議員様、いつまでに別の選挙区に行くと報道資料を出せ』という内容だった」として、「キム前議員はそれを暴露するか迷っており、結局はしなかった」とハンギョレに語った。 当時、キム前議員は自身の選挙区である慶尚南道昌原義昌(チャンウォン・ウィチャン)を離れ、民主党の現職議員がいる金海甲(キムヘ・ガプ)から出馬することを宣言したが、国民の力が発表した党内選挙の候補群には入れなかった。当時の状況に関して、今年7月にハンギョレの取材に応じたキム前議員は、「金海に選挙区を移すという報道資料を出せとキム女史に言われたのか」との質問に、「すでに過ぎ去ったことだ」とし、「(当時)キム女史の話も通らなかった」と語っている。 総合すると、キム前議員は自身の公認漏れが確実視されていることを受け、ライバル政党である改革新党に、自身の選挙区移動についてキム女史とやり取りした会話のスクリーンショットを提示しつつ、公認してもらえるかどうか取引を試みたことになる。ニューストマトはこのことと関連して、イ議員が七仏寺を去ってからも同党のチョン・ハラム議員がさらに2~3日滞在し、キム女史の候補公認介入を暴露する記者会見文の草案を作成したと報道した。 その後、キム前議員は改革新党のキム・ジョンイン公認管理委員長(当時)を訪ね、比例代表名簿の上位に自身を入れるよう要求したが断られた。キム前委員長はこの日、CBSラジオの番組に出演し、「キム・ヨンソン議員は、最初は(比例代表の)1番をくれと言ったが、後に3番をくれと言ったため、それは取り上げる価値がないから相手にしなかった」と語った。 候補公認介入疑惑のもう一つの軸は、キム前議員が2022年6月の国会議員再・補欠選挙で、国民の力の票田である慶尚南道昌原義昌の公認候補となった過程と関連している。当時、キム前議員は比例代表で2度も当選し、京畿道の高陽一山(コヤン・イルサン)で再選を果たした当選4回の首都圏の重鎮だった。誰が見ても釈然としない公認だったため、当時も地域では「上層部介入説」が広まった。キム前議員自らが尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領当選者(当時)夫婦との親交を公然と誇示していたことも、このようなうわさが広まる原因となった。 このことと関連してニューストマトはこの日、キム前議員の側近であるミョン氏が「尹大統領夫妻からキム・ヨンソン前議員が昌原義昌での公認を約束された」と語っている録音記録を引用して、「別の候補が公認されそうになっていたが、キム・ゴンヒ女史がキム前議員に変更した」と報道した。だが、当時の公認管理委員長だったユン・サンヒョン議員はハンギョレに、「当時、共に民主党が女性を公認していた。キム前議員は世論調査で60%台の支持率を示し、競争力があっため公認した」と反論した。 一連の状況を総合すると、キム前議員を選挙区の公認候補とすることに、キム女史がどのような方法であれ関与したことは否定できないとみられる。問題は、当事者であるキム前議員がキム女史の候補公認介入を認めたり、キム女史とのメッセージのやり取りや録音ファイルを公開したりしない限り、明確な実体の把握は難しいということだ。公認介入の関係者とされたミョン氏もこの日、法律代理人を通じて報道資料を発表し、キム女史と交わされたテレグラムによる会話の相手はキム前議員ではなく自身であり、自身がキム女史にキム前議員の戦略公認を要求したが、「自分には力がなく、移動しても予備選挙をしなければならない」との答えをキム女史から聞いたに過ぎないと述べた。 だが野党は、明らかになった状況だけでも「キム・ゴンヒ特検」を迫るべき重大なモメンタムが生じたとみている。実際に野党は、このことが報道されるやいなや、特検の受け入れを一斉に要求した。民主党のパク・チャンデ院内代表はこの日午前、同党の政策調整会議で「報道が事実ならば明白な犯罪」だとして、「キム・ゴンヒ女史が行くべき所は麻浦(マポ)大橋やチェコではなく特検の調査室」だと述べた。祖国革新党は今回の事案を「ミョン・テギュン・ゲート」と命名し、攻勢を強めている。 ソ・ヨンジ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )